おはなしノート

読んだ本:すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。/御坊

永田カビさんの『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』というコミックエッセイをきっかけに、「キャストも利用者も女性の風俗店」がインターネットで話題にのぼり始めたように思います。わたしは書籍化される元となった作品(Pixivで発表されたもの)を読んでおり、時にハラハラしたり重い気持ちになったり、自分の仕事のこといっぱい考えさせられたり、また時に共感したりクスッと笑えたりもしました。ただ内容とは別に、プレイ後に料金を支払っている描写にたいへんびっくりして、せこいお客さんが少ないってことかな、でもちょっと心配だな、と思ったことを覚えています。
実際には料金は先払いとのことなのでこのことは取り越し苦労だったのですが、それ以来なんとなく気にはしていたのです。

つい最近になって『さびしすぎて〜』で永田さんが利用されたお店の方が書かれた『すべての女性にはレズ風俗が必要なのかもしれない。』を読みました。

ぱっとしない風俗業界で新しい可能性を切り拓こうとする人のユニークな一代奮闘記、として読む人も、女性が利用する風俗店という舞台に秘密めいたロマンティックなものを感じて本を開く人も多いだろうと思うし、女性の性的な欲求やファンタジーについて考えるきっかけになったり、いろいろな読み方がある本だと思います。

わたしは同じ風俗業界の違う業種である男性向けデリヘルで働いている人、として読み、同意できるところ、ひっかかるところ、驚かされたところも納得いかないところもありました。
ページをめくりながら考えたことや気持ちなど、主なところだけバーッと書き出します。この立場の人の感想はネットのレビューとかにも上がりにくいかなあと思うので、せめてわたしひとり分でもという気持ちです。

引用文中で「男性向け風俗店」と書かれているのは、女性のキャストが男性の利用者にサービスする性風俗店、という意味で使われており、わたしの文もそれに倣っています。

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p035 性風俗店のルールというよりも、ベッドを共にする者同士の、最低限の約束事
本当にそれ/いいこと言う/風俗店を利用する人全員刮目せよ/でもあまり認識されてないことが多くて日々疲弊するよね

p039 男性向けの風俗店では1時間3900円
少数で極端な例をあげるときりがなく、60分3,900円(だいぶ特殊なはず)でも60分39,000円以上(前者よりはある)でも存在するっちゃするのが男性向け風俗である/しかし本文中に明記されていないがホームページを見るとレズっ娘クラブの料金は男性向け待ち合わせ型デリヘルのボリュームゾーン内に入っていると思う[*1]/にも関わらず「びっくりの値段」「あちらは供給過多で低価格競争がとどまることを知らなくなっているそうで」と書かれることに違和感/極端に安い店に問題があることは事実だが/これでは男性向け=買い叩きとやっつけ仕事だらけ、といったイメージで読まれないか

p065 でもこれって、おかしいですよね
ここでおかしいと言われているのは男性向け風俗にも存在するシステム/危険な客をあらかじめ遠ざけられる非常に少ない比較的有効な方法のひとつ(個人的体験による)/男性向け業界においても客から支持が得られているとはいえないことは確かだが、おかしい、というフンワリした理由でつぶさないでほしい/利用者が女性でご自身が男性のため必要以上の威圧感を与えてしまう、そこに思い至らなかった、という反省なら超わかる

p076〜077 気づいてあげられなかったのは痛恨の極み
気づいてあげられなかったせいというより、そもそものやり方の不備では/まず男性向けではこの出張コース自体やる店は多くないと思うが、もしやるなら店の携帯くらいは持たされるだろう/せめて「連絡してくれればよかった」ではなく事前にそう明文化して伝えておくべきこと/トラブルが起こるべくして起こったこんなゆるゆるの体制で「ボロボロに」なってしまったキャストさんを思うと胸が痛む/これは男性向けにあるノウハウというか意識をもってすれば未然に防げた、十分想定可能なケースなのに認識が共有されていなかったことが悔やまれる

p087 性風俗店勤務が知られると決まってトラブルになるので、バレないよう自分でしっかり管理
無理やり辞めさせられたり、怒ったパートナーが営業妨害を働くなどすると店は大損失なのは事実/しかしプライベートのパートナーに仕事を明かすなと要求するのはプライベートへの立ち入りそのものなので前段と矛盾している/ちなみに男性向けでそのような指示をされたことは一度もない/ただしパートナーや家族に明かしているか否か、明かさない場合なんという建前にしているかを店が把握しておくケースはよくある

p092〜093 個人で性サービスを〜常に危険と隣り合わせだと断言できます
いわゆる直引きに関しては、店側が集客にかけたコストを無駄にされる行いであるというのは分かる/が、この文脈で店舗に属さないセックスワーカーたちを危険だからという理由で否定するのは筋違いであり、単なるワーカー間の分断になってしまっている/しかも無所属のセックスワーカーへの風当たりはひときわ強いという現状がある/後ろ盾のない無所属の女性が心配だと言いたいのでもそれは別の話、言いっ放しの切り捨てにならぬよう配慮が必要では/店舗に属すにも属さないにも理由があり、その選択(もしくは選択の余地のなさ)は極めて個人的な事情である、直引きが迷惑だという話のついでに持ち出すべきではない

p113 もし搾取していたなら〜マシな暮らしができていたでしょう
理不尽な言いがかりに悩まされたのだろうと思うが、搾取にあたるかどうかは使役する側の生活水準の程度とは関係がないので反証として不十分では/風俗業界の使う側と使われる側(おのずと男性→女性となる)に存在してきた搾取を考えると経営者が男性というだけで警戒する気持ちも理解できる/明確な反証もできたはずだと思うが本書のカラーと合わず省かれたのかも/性労働=すべて強制労働であり搾取と捉えた結果の働く人(経営者・スタッフ・キャストすべて含めて)への偏見は多いので、ある程度シビアに書いてもよかったのではと個人的には思った

p118 双方が検査結果をオープンにすれば〜不安に駆られることもありません
p118 「病気をうつされたらどうしよう」という不安をなくす手立ては用意できました
男性向けでここまでやれている店はまずないと思う(やろうとして失敗したところはあったか)ので、とてもうらやましいしこの文化がどうにか男性向けにも流れてこないかな〜などと思う(無理だろうな)/その上で、さらに一歩先のことになるが/検査結果が証明するのは検査日時点での状態であり利用日ではない/(HIVに関してはさらにタイムラグあり)/陰性の検査結果があるからといってSTIの心配が100%ないかのように言うのは正確でない/よってその「手立て」は手立てとして十分ではないしそもそも完全に可能性をなくすこと自体が不可能、そういうサービス内容で運営しているのだから/ならばうつしあわないように個人で出来る工夫にどういったものがあるか、それでもかかったときにはどう治療すればよいかを語ることはできないだろうか/それこそがSTI問題の本質、本来向き合うべきところではないか/陽性だった場合どうフォローアップしているかを書いてもらえたらとてもよかったと思う/でなければ単にSTI=悪 という短絡的な認識を助長するだけ/と思ったら7年間1件も陽性が出ていないとのこと(すごい)/参考URL:[衛生対策について レズ風俗大阪レズ鑑賞クラブティアラ]/この先最初にSTIに感染するキャスト(続けていれば必ずいつかそれは出る)が罪悪感を持たずにすむように対応してほしいというお節介を強く感じる

p129 外でもホテルでもスマホをバッグに入れておいてさえいただければ、キャストはもう何も心配することもなく
「え!?」と声が出そうになった/というのは、わたしの日頃の業務はこんなありさまだからです/(このブログ過去記事)[ざまあよりも楽しいこと(仕事中の盗撮被害について)]/女性向けのお店はおそらく加害行為の率が低いのだろうな、だからわたしたちほど警戒もしていないのかも、とは感じていたが、この一文で思い知らされた感がある/スマホにさえ気をつけていればよかった時代に戻りたくてたまらないというのに/いや、そんな時代はなかったか/この先男性向けで蔓延っているような行為が持ち込まれなければいいがと切に思う/しかしもしかしてこれが良からぬ人に手口のヒントを与えないための書き方であったなら…とすら思う、だとしたら申し訳ない[*2]

p131 キャストも目の前で金額をあらためるようなことはしないそうです。それをやってしまうと現金の生々しさに、やはり雰囲気が損なわれます
「え!?」と今度は声が出た/同様のことは男性向けでも日常的にあるが絶対にいただいた時&帰る時の2度数えるよう言われるしわたしもそうしたい/わざとだろうとうっかりだろうと人間は数え間違いをする/そして雰囲気云々というのは故意に数え間違えた上で封筒の中をあらためさせない人物の常套句でもある/万が一現金に過不足があった場合すべて店が背負ってくれるのだろうか、そうでなければこんなこと言っていいものではない/「キャストのあいだに信頼関係ができて(原文ママ)」いるとあるが、そこへ店から乗っかってこられると困るのでは[*3]/雰囲気を壊してはならない、客の機嫌を損ねてはならないというプレッシャーはキャストに必ずあるので、せめて店だけは取引の公平性の方を優先する立場でいてほしいが

p132 一般的な男性風俗で「現金で支払うと、雰囲気が悪くなる」という話は聞いたことがない
前述の通り普通にあるよ/現金の手渡しがどうしても嫌でクレジットカードしか使わない人や/クローゼットに封筒を忍ばせる人などもいる(目の前で金額を確認するのがルールのため困る)/店と電話連絡する姿を見たくない、現金のやり取りをしたくないから銀行の個人口座に振り込ませてほしいという理由で直引きや月極の愛人契約を要求されることもよくある

p133 これは男性向け風俗ではまったく見ない現象でしょう
決してよくあることではないが「まったく見ない」ともいえない/手作りのお菓子やお弁当を持ってこられて困ったことは何度もある

p134 キッチンがついたホテルを予約してキャストに手料理をふるまった
これがOKということはやはりすべてにおいて基本的にお客さんを相当信用するんだとわかった/かなりのギャップがあるのだ/男性向け(「ペットボトル以外の飲み物、濃い色の飲み物に要警戒」といった話をごく普通のテンションで話す)で働いている自分の視点ではどうしても不安に感じてしまうので、なにごとも起こらなければいいがと思う

p145〜146 ウチには“講習”がありません〜一般の男性向け風俗でも、新人への講習がないお店は多いそうです〜スタッフがキャストに行為を強いるケースもあるのだとか
p175 “講習”と称して男性スタッフの相手をさせられるというお店もあるといいます
男性向けの店で不必要な実技講習を強いられるという問題は存在し、「趣味講習」と呼ばれる(本番行為までも強いるケースは本番講習と言ったりもする)/わたしも何度か被害にあったしぜったいゆるさん/が、男性スタッフが相手役を務めるものすべてが悪ではない/個人的にシャワー時に性器周りの特徴(病気や病気でないものの見た目)を観察しやすい体勢の取り方、男性器の洗い方、部位ごとにに具体的にどの程度の力加減に抑えるべきか、どさくさに紛れて挿入を目論まれたときに効果的な体勢などを習ったことは長年にわたり役に立っている[*4]/「お客様ひとりひとりによって違うため、絶対の正解がない」これは本当のことだとわたしも強く思う、しかし性的コミュニケーションに<絶対の正解>はなくとも<超高確率で間違い>はあるのだ/とくに性経験のまったくない女性などは自分に備わっていない身体の器官の扱い方が分からないのは当然なので講習があること自体が問題ではないはず/講習はキャストと客双方の安全に関わる/(タマを揉んで責めろと言った客が力強く握られて大クレームとか聞いたことあるよ)/講習代わりの観賞コースがなかった時代に「性経験がない新人」を「事細かに書かない」マニュアルを読ませただけで客の前に出したエピソードを、2時間後顔がシュッとしてたから大人になったようだ、と成長物語として読まされるのはきつかった

p148 キャストはただの従業員でなく、お店を一緒に作っている同志
ここはちょっと驚いた/想う気持ちの話ではなく、「従業員」という言葉が出てきたことに/従業員であるなら、雇用保険・労災保険があるということで、もしそうならすごい/通常わたしたちは店と雇用契約を結んでいないので従業員ではない/たとえ従業員のような働き方をしている場合でも、労基法における労働者としての権利を持たされない/ケガでもすればそれまで、自己責任(治療費を経費計上することもできない)/が、仮に労基法を適用されるとそれはそれで非常に困る部分も出るため難しい/等の仕組みを店から明確に説明すらされていないことがほとんど/このあたりは既存の風俗業界の長年の大きくて複雑な課題であり、非常にデリケートな部分/法律関連は難しくわたしも正確な知識を持てていないが、「従業員」がセンシティブな言葉なのは確かなのでもし単なる働いている人という意味で使ったのなら温度差を感じる/だって著者がそのことを知らないはずはないから

p162 「いつまでもあると思うなキャストと割引」
ほんっとーーーーーーーにそれ!!本当にいいこと言う!!全員刮目せよ!!!辞めた子を追っかける人まじでこわいものね!

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全体を読んで、このお店が性風俗業界の中のひとつというより、あくまで別物、男性向けのそれとはまったく違う文化として線を引いたところで運営されているのかなと感じました。
本文中に「一般的な男性向け風俗」が登場することは何度かあるものの、私達はそれと違って、といった意味合いで使われるばかりなので。

レズっ娘倶楽部の成功を受けて、おっビジネスチャンスかも、男性向けと違ってまだ市場があるぞ! と思われ、ちょっとしたブームみたいなものが起こってもおかしくありません。新しいお店が出てくるとして、おそらくその時も女性が女性を接客するメリットとして「安全」をあげて、いかがわしいものとは違うので大丈夫ですよ、という言い方をすると思います(p013のように)。明るくやさしく朗らかに。

男性向け風俗業界には問題がたくさんある。ほとほといやになるほどです。上でわたしはこの本の感想を書いているつもりなのに、いつの間にか業界にある問題をたくさん紹介してしまっていますよね。とくに働く側にとって解決される見込みの薄い問題が山積みで、景気も良くなくて、未来に希望のある業界じゃない。そんなところに属したって大損こそすれどなんの得もない、と判断されても仕方ないし、著者のお店に、それどころかレズビアン風俗業界全体に多大な迷惑をかけている男性向け風俗店もすでに実際にあるわけです(p174〜175)。

連帯してくれ、というのともちょっと違うし、いえる立場でもないし、既存の風俗の経営者がどんなふうに思っているかも分からないし、だいたいわたしも彼ら(既存の経営者たち)を信用しているかといわれると素直にうんと言えないし、あと売防法や風営法にしばられないという大きなアドバンテージもせっかくあるし、あちらとは違いますから路線のほうによほど利があるようにも思います。

でも——「あちらさんと違ってウチは清潔かつ安全ですから」と言われておくしか、引き合いに出されるしかないの?

女性向け風俗は確かに少し特殊な立ち位置にあると思いますが、働く人たちがセックスワーカーであることには変わりない。わたしがよーく見たことのあるような、理不尽な誹りを受けたり苦境に立たされることもあるでしょう。
既存の風俗に向けられる社会からの視線が厳しくそこで働く者たちがスティグマを負わされているままで、労働者としての権利が不十分なままで、女性向けの業種だけが免れて明るく堂々と発展していけるなんてこと、あり得るんでしょうか。
安全で清潔でキモくないから、いわば「準風俗」なんなら「名誉堅気」にしてあげましょう、という流れが起こらないとも言い切れないけど(この本を読んでそういう気持ちを持つ人もいるかもしれない)……万が一そうなったなら、レズビアン風俗はその扱いを受け入れるのでしょうか。受け入れざるを得ないかもしれない。それを責めることもできません、突っぱねろとは言えないです。

さて男性向け風俗には厳しすぎる現状もあれば、長い年月のあいだに積み重ねられたものもあります。夥しい数の実例から導き出された実用的なFAQがあります[*5]。まったく同じやり方でうまくいくわけではなくても、共通する部分はたくさんあるはずです。働いているキャストが脅かされ困ることも、仕事が充実しておもしろいなと感じることも、必ず似ている部分があるはず。
とくにキャストの安全を確保するための方法、そして及ばずトラブルになった時の方法はさらに共有されてほしい。ここはおそらく男性向けが格段にいろいろなHowToを持っています(それでもいたちごっこなところもあるけど)。たしかに女性のお客さんは数が少ないので広く受け入れる必要があるでしょうし、腕力にものを言わせて危険な行為に及ぶ率は男性に比べて低いでしょう。といっても、この先母数が増える可能性もあるし、人間同士にはどんなことも起こりうる。今ほどお客さんを信用してはやっていけない日も来るかもしれません。本書にも「相手が女性だからそんなに危なくはないだろう、というのは考えが甘い」「危険というのは身体的なものに限りません」としっかり書かれています(p093)。

いま男性向けの業界にあるもので、女性向けが利用できるものはすべて利用してほしい。使えそうなものなんでも持っていってほしいと思います。だってせっかくあるのにもったいないでしょう。
だからできれば、「安全で清潔で精神的な癒しを得られる[*6]女性向け、危険で不潔で公序良俗に反する男性向け」といった対比を生む未来を避けてほしいし、逆に女性向けがなんとな〜くバカにされたり除け者にされるようなこともあっちゃいけない。必要に応じて互いにつながれるような舵取りがなされてほしい。そういうのって、雰囲気みたいなボンヤリしたもので決まっちゃうから誰かが何かをしてどうにかできるものじゃないのかもしれないし、心の隅っこでうっすらヤキモキするしかないんですけど。

それから、既存の風俗業界(水商売とか、他のところにも)って、働き方によってうっすらとしたふしぎなヒエラルキー? みたいなものを着せられています。
本番あり/本番なし 脱ぎあり/脱ぎなし 抜きあり/抜きなし 高級店/激安店 みたいなジャンル分けによる階層といったらいいでしょうか(といってもこれが常に一定の方向を向いていなくて、複雑)。ここへさらに貧困がどうだのプロ意識がどうだの誇りを持って働いてるからどうだのこうだのと絡めて論じられ、無遠慮で無責任で気ままな飲み屋の雑談レベルから知的にかしこまったふうの書籍まで、分析とジャッジメントが日々下されている。自分に向けられたものでなくとも、感じ取ることは多々あります。

これを働く人が内面化してしまっていることがあり、「私はソープやるほど堕ちてないから」「オナクラ(基本的に手だけのサービス)みたいなハンパなことしてるやつに言われたくない」とか、書いてて胸が痛いけどそんな感じにいろいろ複雑なのです。
他人への意識だけじゃなくて、業種を移るにあたってひどく自分を責めてしまったりとか。そんなのめちゃめちゃ不毛すぎるし悲しいですよね、でも、完全に切り離されることは誰にもできない。それにあてはめることで自分の心を自分で支えてがんばるしかない時だってあると思うし、わるいのは着せてきた外野だし。

ここに「レズビアン風俗」が加わってひとつ階層が増える、そういう未来も十分起こりうると思うんです。
さっき書いたような、「準風俗」で「名誉堅気」の、そして「マイノリティ」というねじれた立ち位置に置かれてしまったとしたらと思うと、押し付けられるものはあまりにも重たい。だけど世間はそれをいともたやすくやるかもしれない。

もしそうなったら、ひときわ苛酷な分断が待っている気がするんですよ。

それ、ほんと無理。こわい。直接巻き込まれるのも、遠くからふと目にするのもいやです。うまく説明できないけど心がじりじりして泣きたくなる。

女性のための風俗が、目新しく面白い話題ってだけで終わらないで、すくすく育ったらいいなとは思います。でもできれば、こういうこといろいろ見知って勉強して考えてくれる人たちの手で育ててくれると嬉しいけど……それは難しいことだろう、ってあきらめるような気持ちもあります。近いようで遠い、だけど決して無関係ではいられない、つながったおなじ世界。女性向け風俗と男性向け風俗(この呼び分け方って不便で不十分でもっとなにかほしいと思うんだけどどうしていいかわからない)もそうだし、性風俗全般とそうじゃない場所だってそうなのにね。

はぁ、この先どうなんのかな。どうなっちゃうのかなぁ。
読み終わってそういう気持ちになりました。

 

 

*1 60分3900円の店は現在サッと検索しただけでは見つからなかった/あと実際には料金の高い店って60分コース自体があんまりないけど一応こういう書き方にしました
ボリュームゾーンといってもものすごく幅広いものなのは確かだし、わたしも関東以外の相場を把握できてはいないと思う、それでも違和感があるということです

*2 ああいう記事をすでに書いていてこのブログの読者は読んでいるはずなので許してほしい…とかそんな風に考えてしばらくドキドキした、そのくらいギャップがあった

*3 羽振りの良い常連本指名(やや高価格帯の店で、長いコースで何度も呼ばれていた)にお金をちょろまかされた(彼自身が払ったお金を後でこっそり抜き取られた)ことがあります
お金に困っていたとは思えないので腹いせ(店で怒られて立場が悪くなることを期待、とか)の方がまだありえるけど、結局分からない
なんでそんなことを、と理解に苦しむようなことって普通に起こるんだよね

*4 この慣習がいまどれくらい残っているのか廃れているのか分からないけど(ふと気づけばベテランになっていたからです…)実技講習では店からキャストに報酬が支払われていた(1本分の仕事の最安値と同等かやや安い程度の金額だったかな)
講習中にうっかり(?)抜いてしまい多めの額をもらったりもした(特別な場合を除いて講習で射精するのは不名誉かつご法度なのだが、経験の乏しいキャストには勃起しないと教えづらいこともそれなりにあるしフニャフニャだとただでさえ非常にナーバスな状態の新人からなけなしの自信を奪ってしまうため「全くそういう雰囲気じゃなくても必ずたたせられる能力」を買われた彼、めっぽう早い体質の人だったのである)
講習は店の利益につながるもので、その都合につき合って通常の仕事と同等の行為を行ったキャストには対価を支払うべきと解釈されていたってことかな

望まれていないと知りながら裸になり、あれこれ説明しながら勃起を持続させねばならないかつ射精してはいけない、かように講習は精神的肉体的にハードで敬遠される仕事だと聞いた
実際にまともだった講習は地位が高くないスタッフから受けたことが多い(チクられたらボコられるってのもあるだろうけど)
一方ろくな指導もなく「ちょっと締まり具合を確認します、これは決まりですから(ニヤニヤ)」みたいなパターンはぜんぶそれなりの権力を持った人間だった、ぜったいゆるさん

*5 といってもそれがワーカーの間で効率的に共有されていないという問題があるんだけど

*6 この「精神的な癒し」を期待されること、セールスされることの問題もすごく大切な話なんですが、また別の機会にします

余談が多くてすみません!

2018-04-26 | カテゴリ: まじめなはなし | タグ:  

 

【お願い】取材や出演などのご依頼について

さっきあんなにワアワア言ってた人がまだ何か書くようです。今年のうちに言いたいことをぜんぶ言う作戦です。

前回はわたしの本業、風俗業での2017年の話をしました。それと別に、「椎名こゆり」の名前の方で今年を振り返ると、こちらではトークショーなどイベントの出演依頼やインタビュー取材の依頼、そういうお話をいただくことが増えたなあと思います。

そして、そのすべてをお断りした年でした。

声をかけていただいたことにはありがたく思っているのですが、お受けできるものがひとつもなかったのです。
わたしのプライバシーについてどのように取り扱っていただけるのか、という点について、あまり考慮されないままお誘いをくださった件が多かったように感じています。そのため、納得いく形でお引き受けすることができず、すべてをお断りすることになりました。

「顔写真は提供できません」「働いている店やそこでの名前(源氏名)は公表できません」「知らない人の前で被害経験を語りません」ということをわざわざ言わなければならないのか……と思い、落ち込んでしまったのも正直な気持ちです。
でも、わたしにとっていつの間にか当たり前になった感覚だというだけで、セックスワークを取り巻く問題について興味を持ったのがごく最近、という方には難しいことかもしれない。性犯罪など取り扱いに注意が必要なトピックについて考える期間がまだ浅かったり、ふだん関係の薄いお仕事に携わっている方にとっては、誰かから指摘されて気づくことが多いものかもしれない、と思い、どこかで機会を見つけて書いておこうかなと思っていました。なので今やります。

次に引用するのは、ある方にわたしから差し上げたメールです。主催するイベントのトークショーにゲストとして登壇して欲しい、というご依頼へのお返事です(一部書き換えており、お名前なども架空のものです)(見りゃわかるよねごめんね!)。長いお手紙をいただいたのですがお断りせざるを得ず、なぜだめなのか、ということを詳しく説明させていただいたので、他の方にも読んでもらえたら何かの役に立つかもしれないな、と思って載せることにします。

《以下引用》

(株)当欠エージェンシー パネ山マジ太郎 様

この度のお話、残念ながらやはりお受けすることができません。
大切なイベントにお招きくださるほどですから、わたしが何者なのかということは多少ご存じかとは思いますが、この「椎名こゆり」という名前は書き物のお仕事をする上でのペンネームであり、本業である派遣型風俗店での勤務にあたっては別の名前(いわゆる源氏名です)を使って仕事をしております。
源氏名でのわたしと「椎名こゆり」が紐付くことはあってはならないことですので、椎名として活動するにあたって顔や姿をはじめ、諸々の個人情報は明かしておりません。

性的サービスの仕事は、しばしば客となった方から強い執着を持たれることがあり、そのリスクは個人の努力や工夫で避けきれるものではありません。
お客様の数は多いので、中には○○を愛好する方も、△△に関心のある方もいるでしょう。
(注:○○や△△には今回のイベントに関連するテーマやモチーフとなるもの、取り上げられる社会問題が入る)
わたしに対し特別な感情を持ってはいない人であっても、見覚えのある顔だとわかった途端に「自分はあの女を買ったことがあるぞ」と高揚し、あることないこと話したくなるのも、人間の感情の動きとしてありえるでしょう(「奇遇」に遭った人は魔が差しやすいものですよね)。
なにかの拍子に偶然が重なる可能性は充分にあり、そのときわたしが被る不利益は予測がつきません。所属する店の外で起きたトラブルは、店も面倒をみてはくれません。
安心して働き続けるためには、筆名、源氏名、本名、そして顔などの見た目、これらを繋げられないよういつも個人で注意を払う必要があります。
もちろん、「テレビのドキュメンタリー番組であるような、磨りガラスでできたついたて越しでも出演したい!」のように思う人もいるかもしれません。まったく無頓着で、そういったリスクについては起こってから考える、という人もいないとは言いきれません。ですが、多くの場合で「東京のセックスワーカーが、東京のイベントで、顔を出して壇上に上がりものを言う」ことは、おそらく経験者ではない方が思い描くよりもずっと難しいことであり、危険を伴うことなのです。今後同業の方にコンタクトを取られる折には、どうか思い出していただけると幸いです。

身に余るお誘いでしたのに、このようなことを申し上げてすみません。こういったお誘いや取材依頼の類は多いのですが、わたしたちの身の安全にお気遣いをいただけるケースがあまりに少なく(むしろ蔑ろにされることが多く)、同じような形で活動している現役のセックスワーカーたちもおそらく同じ思いをしていると思うのです。
末筆ながら、イベントの成功をお祈りいたしております。
《引用おわり》

この件はイベントへの出演依頼、というものでしたが、研究でも調査でも取材でも同じことです。
セックスワーカーの意見が聞きたい、と思ったときに、わたしのことを思い浮かべてくれる人がいる、そのこと自体はたいへんうれしいです。いろいろ書いてきてよかったなって思えます。わたしにできることがあるならしたい、というのは本当の気持ちです。誰にもなにも頼まれたくない、というわけではありません。

しかし、その「できること」というのにはそれぞれ範囲があり、人が想像するよりも実際は狭かったりするものだ、ということです。それぞれに違う、できることの範囲を尊重してほしいのです。軽く見積もらないでほしいのです。

とくに舞台に上がること、本に掲載されること、テレビに出演すること……これらについて、お断りしたときに「なぜ嫌なのです? 皆さんこぞって出たがるのに」「チャンスを与えてあげているのに」といったニュアンスを返されると、とりわけつらいものです。ちょっと卑屈な見方をすれば、日の当たらない隅っこにいるあなたを表舞台に引き上げてあげると言っているのに断るのは生意気、と思われているのでは? とも思えてきます。もしそうなら、その感覚こそがわたしたちを閉じこめていると気づいてください。

いかにわたしの書くものに共感したかを強調し「あなたが味わった辛い目をたくさんの人に知ってもらいたいのに」「声を上げる場所を作ってあげるのに」というのもそうです。「人々の気づき」「人々の学び」のために、とよく言われますが、そのために前に出た人が差し出すものは何か、それによってなにを失う恐れがあり、どうすればできるだけケアできるか、そういうことに考えを至らせた上で相談してくれている、と感じられない場合、頼まれた側は「これは搾取では」と警戒します。「貴重なご体験」とはどういう意味なのか、誰にとって貴重なのか、と思います。

セックスワーカーを「面白い、興味深い」と見る人がたくさんいるのは知っています。しかし「面白いところだけよこしてくれればいいです、リスク管理は適宜ご自分でいいようにしてください、こっちは素人なので」という姿勢で持ち込まれた話には乗れるわけがない。セックスワーカーとしての意見を求めるのであれば、セックスワーカーが置かれている立場やさらされている状況についてもご一考の上で声をかけてくだされば幸いです。

「何でも協力するから気軽に声かけてね!」とは決して言えませんが、なにかありましたらご連絡ください。

以前からときどき依頼をいただくものには学生さんの卒業論文もあります。そちらについては、申し訳ないのですが現在すべてお断りしています。これまでいくつか協力させてもらう機会があったのですが、心身ともに疲れることがとても多かったので……。

このあたりのことはとても分かりやすく説明されている文章がありますので、MEMEさんとマサキチトセさんのブログを紹介します。どちらも“LGBT”を取り上げた研究に関して書かれたものですが、セックスワーカーに関してもまったく同じことが言えると思いました。(特にさまざまなマイノリティについての)多くの研究や調査において、そういうことが起こっているのだろうと思います。


MEMEさんの記事中に「本人の性格が悪いなどということではなく(むしろ良い子なかんじ),ただお作法を教えられていない&全然勉強していない(本とか読んでない)という印象を受ける例が私の場合多かった」とありますが、わたしも同じことを思います。あーほんとそれ! って感じです。
「やっているのは学生だが,しかしバックには研究のプロたる大学教員がついているわけで,それなのに」ともあり、わたしは(自分が大学生であったことがないために)指導教官という大人がついている、ということに考えが至らず「まだ学生の人がたったひとりでがんばっているのだから」といった変な義務感をもってしまい、ずいぶん無理難題であったりちょっと失礼であったりする要求(だと知っていてぶつけているわけではないんだと思います)に応えてきてしまった、と反省しています。

お受けしてよかった、と感じている「調査」もごくわずかながらあります。その中に大学の教授をしていらっしゃる方からのインタビュー調査があり、それを経験してようやく「ああ、『調査』の対象となるときは本来このくらいしっかりとした配慮があるものなのだ、ああ、それはそうだ!」と、本当にようやく気づくことができたのです。そのときのインタビューを録音したものと、元にして書かれた論文はわたしも持っていて(ちゃんと渡していただけたので)、すごく時々聞き返す(読み返す)とほんのり元気が出ます。わたしの当事者性を尊重し、堅苦しい雰囲気ではないながらも敬意と慎重さをもって質問してもらえている、つまりマサキさんの翻訳記事にあるようなことがしっかり守られているからです。
調査や研究をする人とされる人との間には、マイノリティとされる人を対象とする場合はなおさら、どうしても立たされている場所の違いから力の差のようなものができます。でも、それを越えて良いコミュニケーションを作り上げることもできるのだと知れた経験でした(しかしそのためには、調査や研究をする側の人の知識と心がけが不可欠です)。

2017-12-31 | カテゴリ: まじめなはなし | |  

 

ざまあよりも楽しいこと(仕事中の盗撮被害について)

久しぶりに自分のブログにアクセスしたら、昨年の今ごろはスケートのアニメにドボンとはまっていた文章が出てきて懐かしさと自分への「わかるわかる」にむせび泣きました(それにしても勢いだけで書いていて訳が分からないところも多すぎたのでこっそり書き直したりした。だせえ)。もちろん今も思いきりはまったままです。刺さったものが抜けないんです。幸せです。

今年のわたしはというと、吐く吐く詐欺にこそ遭いませんでしたがやはりそれなりにお客さん方に翻弄されて疲れ果て、同僚やスタッフさんと苦笑いしながら「来年もよろしくね」と言い合ってお別れしたところです。『客が財布を開けたらば3800円しか入ってなかった事件』とかありました。それなりのホテルのそれなりの部屋だったので笑ってしまいましたが、油断できませんね。本人は「おかしいぞ!?」と騒いでいましたが、「今夜行ったお店を順番に思い出してみて」と優しく語りかけてみたところ数時間前の記憶がすでに曖昧モコモコのフワフワだったので、そのお金は落としたりスラれたりしたわけでなく、全てお酒になってお腹の中にあるのだろうとわかりました。
そこまで酔っているといつの間にかわたしのせいにもされかねないな、と思い「どこかのお姉さんにあげちゃったんじゃありません? モテるんですね♡」とよく考えると理屈が不明なことを言ってサラッと失礼しようと思ったのですが、電話でいいからと叫んで懐から立派なお色のクレジットカードを出してしまったため断る権利が消滅してしまいました。本当は3800円のところ5万円持っていると思い込んじゃう(&見知らぬデリ嬢の前でカード番号を平気で読み上げるまでにセキュリティ意識が損なわれている)ほどへべれけであるという事実は変わらないため「まさかこの人吐かないかな大丈夫かな」とスリリングな時間を過ごしました。しかしこんなに酔っていてはとても身体は反応しないだろうに、それでも他人のぬくもりがほしかったのだな、柔らかい肌に触れて眠りたかったのだな、と思い、優しく接しようとつとめましたが、蓋を開けてみたら確かに泥酔しているのに下半身は絶好調、そのうち調子に乗って「お金あげるから」と禁止事項を求めてきたので(3800円くれるつもりなのかな???)と思いました。本人も気がついたようでばつが悪そうにしていましたが、ここで「カードで」と言ってくれれば小さな笑いが起こったのに惜しかったです。

待って、そんな話をしにきたんじゃなかった。

1年の仕事を振り返って、思うことがあります。

「やっぱじわじわ増えてるよね、盗撮」です。

同業のひとたちにとってはとっくに昔から切実な迷惑行為(なんて言葉じゃ足りない)だしツイッターなど見ていてもよく話題になっていたけれど、今年は本当によく見聞きしました。毎週毎週遭遇するってわけじゃないけれど、勤めている店の他の女の子にも、他店の友達にも、そして自分にも、何度かそういう話がありました。小型カメラ(と、それを用いたハウツー)が普及しているということだとしたら、来年はもっと増えるのかもしれません。

わたしがこの業界に入った頃はまだスマートフォンという言葉もなく、「大きい荷物の客に気をつけろ、鞄の口が開いててレンズが見えるかも」「怪しいときは電気を消せ」なんてお店から言われたのを覚えていますが、いま思えば平和な時代だったと言いたくなってしまうほどです。
(実際にそういう入念な下準備で乗り込んでくる盗撮犯が少ないけれど存在したわけで、平和なんかじゃないよね)

体位を変えてほしいと言って女の子に後ろを向かせた隙に携帯電話で撮っちゃう、というのもよくありました。ピローン♪ と音が鳴って、「いま撮ったでしょ」と言うと「え?何が?」とシラを切ったり、「消したから大丈夫だよ〜」とうそぶく人が時々いたものです。でも店のスタッフが確認するとSDカードの中にちゃんと入ってるっていう。せこい手口だと笑われるかもしれませんけど、そういう人いっぱいいたんだよー!

時が流れ(スマホの普及、無音カメラアプリの時代を経て)、いまわたしたちが悩まされているのは、はじめから隠れて撮るために作られた小型のカメラによる盗撮です。身の回りの日用品、文房具やお菓子やはたまた飲み物などに偽装したカメラがいろいろと、普通に売られていて誰でも買うことができます。長い時間録画できて、しかも部屋が暗くてもじゅうぶん鮮明な画像が撮れるようですね。もうため息しか出てきません。勝手にどんどんテクノロジーしないでほしいものです。しかし正当な理由で必要とする人もいるのだ、とも思い、だとするとそれはやはり他人から侵害されている人が証拠を作るためだろうなあ、とますます心が苦しい。どこもかしこも大変かよ。

撮った動画がリアルタイムでスマホに転送されていたケースもありました。盗撮が発覚した場合に「使用したカメラを没収し、身分証のコピーをとって出入り禁止にする」みたいな対応をするお店もけっこうあると思うんですが、それだけでは足りない時代になってきたのかもしれません。

スタッフが部屋にやってきたとき、慌てるよりもきょとんとしている人が多いように思います。発覚することを恐れながらやっている人ばかりではなく、バレるなんて想定もしていない(または、バレたところで店が介入するようなことじゃないと思ってる?)人がけっこういるということなのかな。「○○(店名)の者です。お話を伺いますので本日のサービスはこれにて終了させていただきます」とまで言われてもまだ理解できず「なんだ君は」と偉ぶっていた人もいました。その無自覚さ、とても怖かった。

そして証拠を突きつけられもう逃げられないとなると、そこで初めて謝るんですよね……スタッフに。わたしではなくて。「すいませんでした」「勘弁してください」「会社にだけは」「妻子がいまして」って。家族構成どうでもいいっつうの。今後の自分の処遇だけに興味があるのだと思います。彼らにとって失敗とは、してはならないことをしたことではなく、それが店にバレてしまったことなのでしょう。
若い人、中年の人、一見の人、常連の人、いろいろです。でもまだわたしに向かって自分から頭を下げた人はひとりもいません。もし下げられたとして「じゃあ最初からするなよ」と思うだけではあるんですが、それでも悲しいことだと思います。とことん舐められているわけですから。

今年は「何年も指名し続けてくれて、良い関係を築けていた(と、わたしは思っていた)お客さん」からも盗撮をされました。これにはさすがにびっくりしましたし、精神面のショックが大きかったです。
彼に気づかれぬよう店にSOSを出すとき、やられていると分かっているはずなのに「でも、でも、何かの間違いでは」「わたしの勘違いでは」という思いを拭えずにとても混乱しました。情けないほど、しっかりできませんでした。彼のことを考えていた時間、身体のクセやプレイの好みを観察して把握し、どうすればもっと喜んでくれるだろうかと試行錯誤を繰り返してきた数年間とその間ずっと抱いてきた感謝の気持ち、自分の仕事を気に入ってもらえていると感じた嬉しさなどが、すべて一瞬でなくなってしまった。それがすぐには受け入れられず、腹を括れなかったのだと思います。
それから、自分がしようとしていることが彼の心や生活にどんな変化や影響を与えるだろうかということも、考えられなかったし考えたくないのに、考えようとしてしまうのでした。「こんなにいい人なのに」と。明らかな禁止行為をした人に向かっていい人もなにもないのにねえ。
幸いわたしは普段店から「盗撮に関しては不審なモノや行動があった時点で男子スタッフに丸投げしてくれてかまいません、万が一勘違いであっても紛らわしい行いで恐怖を与えた責任はお客様にある、と考えるようにして勇気を出してください」と言われていたため、最も守るべきものは彼でなくわたしだ、店は味方についてくれるはずだ、と心を立て直すことができ、最後には「助けてください」と言えました。言えてよかったです。

 

そもそもなんのためそんなことを、と思うかもしれません。何のためなんでしょうね? わたしも分かりません。

趣味で、という人はいると思います。趣味としてあとで見返して楽しむために裸の女性(または、自分がサービスを受けた時の、というところに意味がある人もいるかもしれません)の画像や動画が欲しい、でも、撮らせてほしいと頼んでもどうせ無理だから/嫌われるに違いないから/相応の謝礼などを払うことになっても嫌だから/頼んだと知れたらそれだけでブラックリストに入りそうだから/カメラを意識していない自然なものがいいから/などなど、の理由で、気づかれないようこっそり撮ってしまえ、と思いついてしまった人、いるだろうなと想像します。

それから、撮った画像や動画をなにかに利用する人もいると思う。人が見たがるようなものをインターネットにアップロードして、お金に換えることもできる時代です。または同好の士からいいねをもらって心を満たす、あの人はさすがだと尊敬を得る、こいつウケるぞと一目置かれる、という使い道もあるでしょう。目にする機会がないとピンとこないかと思いますが、街中で盗撮した女性の画像を載せてワイワイ盛り上がっているツイッターアカウントは実は腐るほどあります(本当に腐って土に還ってくれればいいのですがそうはいかないらしいので、これのことかと思った際は通報してもらえたらと思います)。
デリヘルを呼んで隠しカメラで生配信、という手段を選んで、逮捕された人もいると聞きます。

それから、これはわたしが勝手に想像しているだけなのですが——撮る、ということそのものに意味がある人。画像や動画に使い道があるわけではなく、ただ相手に知られず撮影に成功することを楽しんでいる人、いるんじゃないかなあと思うんです。
本当なら嫌がられるはずのことを、まんまとやってのけているってこと。ざまあみろ、という気持ちが心躍らせ、高揚させるのではないかしら。
もしかしたら彼らにとって、わたしたちはどこか気持ちの良い存在ではないんだと思います。
ちょっと服を脱いで触らせるだけでこっちに何万円も払わせて、別の男やイケメンにならやらせてるはずのことを「規則なので」と断ってくる、生意気なあいつら。
または、何も考えておらず頭も悪いくせに女だというだけで金になって、きっとめちゃくちゃ儲けてて、人生チョロいとほくそ笑んでいるに違いないのに世間からは「事情があるはず」「頑張っている」と擁護され可哀想な弱者の顔をする、癪に障るフーゾクジョーたち。
それか、いつもあんなに笑った顔を見せて楽しそうにしているのに、食事に誘っても連絡先を聞いてもなしのつぶて、俺のことどう思ってるのか問い詰めてもいい返事をしない、自分が幸せにしてやると言っているのにどうしてそれが分からないのか、でもお店を通して呼ぶとちゃんと来る、納得いかないあの子。
もっともっといろんな形があるとは思うけど。

「バカ女め、ざまあ(笑)」という気持ちが、やってやった、という達成感や優越感が、彼らをほんのひととき癒しているんじゃないか、と、ふと思ったのです。そしていつの間にか抜け出せなくなってしまうんじゃないかって。
そういう意味のことを直接言われたわけじゃないです。わたし自身が何度か被害に遭ってみて、そしてその後の顛末を知った(もちろん本人と接触はしないので、店のスタッフや対応してくださった弁護士さんや、時に警察の人を通じて聞いた範囲内ということになります)上で抱いた勝手な感想ですし、盗撮する人の心の内を想像してみたってなんの足しにもなりません。たぶん来年も撮られるんだろうなと思うと気が重いです(むしろもっとテクノロジーがイノベーションしやがって見破れないケースが増えるかもしれません)。でも、ついつい考えてしまうんですよ、こんなにも気分の悪いことを。本当なら対等なはずの人から舐められ見くびらればかにされる、とっても迷惑で、恐怖なことなのに。本当にいやなことなのに。

盗撮していて、やめたい、と思っている人。
やりたくないことをやめられなくて苦しんでいるなら、それは心身の不具合かもしれません。話を聞いてくれる人も見つけにくいでしょうし、親しい人にほど話せないことだろうと思います。医学的なことは分かりませんがこの世にはいろいろな依存症があって、攻略法を考えている人たちもたくさんいると思うんです。ひとりで勝てる敵ではないとしても、戦う方法を知っている人がいるかもしれません。あなたがあなたをちゃんと助けてあげてください。そのために他人に助けを求めてください。「これで最後だから」といってデリヘルを呼ばないでください。わたしたちは何もしてあげられません。
それから、見つかってもろもろ失うことを心のどこかで望んでる人、あなたも必要なのはデリヘルじゃないです。「見つかったらやめられる」という考えもだめです。そこには必ず、すっごく傷つく人がいます。あなたの破滅願望のために人を人間不信に陥らせないでほしいんです。

盗撮していて、やめる必要を感じていない人。
あなたが盗撮によって得ているもの、お金だったり愉しみだったり、その代わりになるものをわたしがあげることはできないので、やめろと言ってもしょうがないことですよね。だからわたしはただあなたを憎むことしかできません。
憎みながらも一応、盗撮よりももっと楽にお金になることや、もっとおもしろいって思えることに巡り合えたらいいねって思います、いちおうね。いますぐ探しに行ったら間に合うかもしれません、盗撮はいつか必ず見つかるので、それより先にやめられた人だけがしれっと生きていけるのです。しれっと生きていくことが幸せかどうかはわたしにはわかりませんが、清廉なフリしてしれっとやっていくルートをたぶんあなたは望みますよね。だとしたらバレるより先にやめるしかないんじゃないですか。ていうかやめろ。しょうがないことでも言うわ、言うだけタダだもん。やめろ。今すぐやめろ。

「ばれなければ、誰も傷つかない」派の人。
心優しいあなたが道路に飛び出した子犬を助けようと自らの危険を顧みず身を挺し、不幸にも事故に遭って命を、または一命はとりとめたものの以前のような暮らしができなくなり、お家に戻れなくなったり、周りの人とスムーズに意思疎通ができなくなってしまったとします。そのとき、あなたのスマホとメモリとハードディスクに入ったあのデータやそのデータが即時破壊されるシステムを開発してから言え。クラウドにもハンマーとドリルで穴を開けてください。わたしはむちゃくちゃなことを言っています。でもあなたも同じくらいむちゃくちゃなんですよ。いつでも引き返せると思っているのはあなただけです。やめろ。

どちらさまもよいお年を。ざまあみろって思う楽しみよりも大切な楽しみが、来年にはみつかりますように。

 

2017-12-31 | カテゴリ: まじめなはなし | |  

 

ワーカーズライブ:ずっとこのまま

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: ずっとこのまま

11月のワーカーズライブを担当しました。
同業の(とプロフィールに記載されている)方の書いてくれた感想をこっそり拝見すると「いるよねこういう客。困るよねぇ〜」と言ってもらえていて嬉しかったです。しかしそうでない方からは「気楽に読めるやつかと思ったのにホラー」「怖いやつは怖いと言ってくれ(笑)」みたいな声がちらほらあり、そのー、なんだ、ごめーーーん。怖がらせるつもりはなかったんだよう。というか完全に「ヤバい客あるある早く言いたい〜」みたいなノリでいたよね。うふふ、申し訳ない。あれかな、業界に慣らされちゃったかな、それともモルダーあなた疲れてるのよみたいなことかな。

……でも、ちょっと思ったんだけど、わたしももしかしたら、自分が風俗嬢であることを明かしていないときに他人の話としてこれをきいたら、「こっわ〜!」と思ったり言ったりするかもしれないのかもなあ。いやどうかな。うまく言えないけど、そんなふうに思いました。

こういう、セックスワーカーのフィクションを書いているときは、「わたしの仕事を知っているひとたち/同業経験がある人もそうでない人も(おそらくは3:7くらいで)混ざってて/とっても仲のいい人も、すこしだけ仲のいい人も、友達の友達、って感じや通りすがりの人も混ざっている/性風俗業界に対しては懐疑的な人もいる(が、そこで働く人に憎悪を表明している人はいない)/と一緒に和やかにおしゃべりしてる中で、わたしがいつか人から聞いた話をしゃべって聞いてもらってる」みたいな気持ちで文章をつくっています……うーん、たぶん。はっきり説明しづらいけど。
それで、そのときには、普段のわたしの日常生活ではそれなりに出番が多いはずの「仕事のことは明かさずに、で、明かさないものだから自分でも半ば忘れて社会生活を送っているわたし」は、もうすっかり隠れて、出てきてくれないんですよ。ちゃんといることはいるんだけどね、わたしはいいよ〜、って感じで部屋から出てこないし口も出してこないしアドバイスもしてくれないの。

そういう自分にもし読んでもらったら「こわいねえ」って言うでしょうか。いやどうだろうな。わかりません。

 

それはそれとして、でもさー、こういうの、実際は別に風俗じゃなくたってありますよね、つきまとわれ問題、ストーカー問題。わたしもありますもん、まったく別の仕事をしていたときに、お客様からつきまとわれて業務にも私生活にも支障が出たこと。相手の職務と自分の立場を利用した迷惑行為に困らされる……と表現すれば、もうたやすく想像できる単なる「接客業あるある」ですよね。

むしろほら、尾行されてるときに一対一じゃないうえさらにこっちは鉄のかたまりの中にいるわけですよ、だからまだ安全性が高いといえるのではないだろうか。さらに堅気の接客業と違って本名の書かれた名札とかはつけてないわけだし、運転してる人は3連続同じ方向に曲がる程度の知識は持っていて、上司はたぶん同様の状況に対応した経験とか持ってるわけですよ。ほらほら、怖くなくなってきたでしょう。どうかな。どうかな。だめ?

(……これって「堅気の接客業」の非常時の守りが弱くてやばいってことですよね。本名の名札、あれ本当に必要だろうか。判別できれば戸籍にのってる名前じゃなくたって用は足りるのでは)

あとお友達に「最後どうなったのか分からないから怖いんだよ〜!」って言われちゃったよね。なるほどそうだわ。これはですね、お客様が『やってはならないこと』をやってしまったら、そこから先は店の出番なんですよ。粛々と対処はされるでしょうけど、その内容をミユさんが具体的に細かく知ることはないと思うんだ……とりあえずわたしの場合は、今まで働いてきてだいたいいつもそうだったので。
ミユさんは誰にも守ってもらえないって思ってたけど、そんなことないと思うよ。だってデリヘルだとよく「カギ開けとくからノックしないで入ってきて」とか「部屋のインターホン押さないで入ってきて」みたいな注文する人もいるんですよ。理由はいろいろあって、隣近所を気にしてだったり、出張で泊まってるホテルで隣が同じ会社の人だから〜的なことだったり、到着を待つ間に寝落ちしそうだから女性に優しく起こしてほしい(もう寝ちまえよなあ!)とかもあります。それのバリエーション、客の図々しさが跳ね上がった版でしょう、カギを渡されて使わされるって。

そりゃあ店としては喜ばしいことじゃ全然ないし「そのころちょっと相談してくれていれば……」とはなるだろうけど、その場でテクニカルに回避したり力強く突っぱねたりできなかったこと、すぐに店に言えなかったこと、そうできるだけの経験値も立場も持ってなかったこと……それって、『やってはならないこと』じゃ、ないですよね。
自分の経験からそういうことを察して、カナコさんが言ったのが「悪くてもいいけどたぶん悪くない」です。きっと。

守ってもらうべき場面では守ってもらいましょう。堂々と助けてもらいましょう。わたしたちはいろいろな危険に遭う可能性の中で仕事をしていて、雇う側が知らんぷりを決め込んでよいことではないはずです。警察にしてもそうです。もし客が『やってはならないこと』をやったときは、それによって目の前に危険が迫ったときは——たとえそれがわたしたち自身が招いたかのように外野から見えたとしても——助けられる権利、安全確保に協力してもらう権利があるはずですもの(もっと言っちゃうと、わたしたちの身ではとても大きな恐怖や危険であっても、店のスタッフが相対すれば全くそうとは限らなかったりするものです)(男性スタッフが出て行くと、さまざまな「力の差」がガラリと変わるということですね)(心強くもありますが、悔しくやるせないことです)。

……なんて言ってはみたものの、ですよ。
そういう準備のない店や気持ちのないスタッフに当たってしまう可能性は、やっぱり、あるんだよ。そしてそれは、実際にトラブルに遭う前にすべて見抜けるわけじゃない。どの程度やってくれるか、正確に知ることはあまりに難しいです。やれやれだよ。祈るしかないなんて悔しく頼りないことですが、これもまた、性風俗業に限らない問題ですよね。
好意がきっかけであろうと、親切を受けたことがきっかけであろうと、つきまといは加害行為ですからやってはなりません。そして相手の職務と自分の立場を利用した加害は特に卑劣です。
さらに、運悪く危険を回避しきれず被害が甚大なものになった場合に『やってはならないこと』をやった者ではなく「そういう仕事をしていたわけだから」「好意を持たせたのだから」とやられた方の者がより責められ、それをもって一件落着かのように扱われる、そういう問題も忘れてはいけません。

 

ほとんどの安全面で、派遣型(デリヘルのことだよ)よりも店舗型の方に分があるといわれます(し、実際そうだなと思います)。でも、「帰り道を狙ったつきまとい」については、店舗型に勤める人にも降りかかる危険です。
超当たり前だけど出勤する場所が割れている上、出勤・退勤時間がホームページに出ているので尾行がかんたんなのです。ホテル型(受付があり、近隣のホテルで接客する)の場合だと衣装ではない服を見られるので、その日お相手した客が出来心を起こしてそのまま近くで待ち伏せ……なんてことも、デリヘルより容易にできてしまいます。

わたしの話を少しさせてください。おばあのむかし話を聞いてくれんかの〜。
あれはもう10年前、アタシが渋谷のホテル型の早番で働いていた頃のことじゃ。よく帰り道に109やマルイに寄って、お手洗いで数分過ごしてから駅へ向かっておったもんじゃ……喋りづらいから若返るぞい。無駄なことなんだろうと思いながら、わたしって小心者だな、と思いながら、それでもやめられなかったのを覚えています。
ある日、帰り支度をしてお給料をいただいたときにスタッフから「さっき近所のお店さんから連絡があったんだけど、なんか変なオジサンがウロウロしてるって〜。ちょっとキモいから駅の手前まで送るわ〜」と言われたことがありました。そういう不審者はすーっごく珍しい存在ってわけじゃないから、そうなんだ〜イヤですねえ、すみませんがお願いします〜、いいのいいの、ついでに買い出しあるし〜。ってな感じで、スタッフと一緒に店を出たんです。
こーゆー店の女の子をジロジロ見る趣味のヤツか、それとも現金ひったくろうとしてんのか分かんないけど、どっちにしても迷惑だね、と言い合い、そして楽しく談笑しながら歩いていたら、なんだか背後で変な気配を感じた。その瞬間スタッフにバッと肩を抱かれ、後ろでは別のスタッフが男を取り押さえていて、ええっやっぱり変な人がいたんだわ怖い!……と、その不審者の顔、見たことがある……自分の指名客でした。
目的やなんかは省略しますが、はじめからわたしが狙われていて、スタッフはぜんぶ知っていたようです。こっわー。
10年くらい(もしかしたらもっと)前の話です。その店の現場のスタッフは手練手管の人が揃っていて頼りになりましたが、まもなく警察に摘発されて消滅しました。私たちが会ったことのない偉い人が逮捕された流れでそうなったらしいという噂でしたが、本当のことはわかりません。働いてる人、びっくりするほど何も知れないんです。

スタッフさんたちともそれきりになりましたが、最後(になるとは、わたしは思っていませんでしたが)の時に、あの日隣を歩いてくれた人が「日ごろの感謝だよ」と言ってちょっとしたプレゼントをくれました。そして、どこに行っても頑張ってね、どこに行っても大丈夫だからね、と言われました。おいおいもういらないみたいなこと言うなよ〜! と大いにスネましたが、もしかしてこの人辞めちゃうんだわ、と勝手に察して、ありがとう、と言いました。
それからすぐ、店の電話は繋がらなくなりホームページは404になりました。

彼がくれた優しさこそ、もしかしたら吊り橋効果みたいなものだったかもしれません。理不尽な目にあう現場を目の当たりにしたゆえの、同情のようなものだったかもしれません。でも、その言葉は10年経って初心者でなくなった今も、わたしをちょっとずつ支えています。

悔しく頼りない世界でなにかとりあえずの支えになるものがあるとしたら、大丈夫だ、と言ってくれる人です。守るよ、とあらわしてくれる人です。その場限りの優しさでもいいし、「それが仕事だから」でもいい。わたしもそう言える存在でありたいし、それはなにも同業者じゃなくたっていいのです。

そういうことが書きたくてこの話が思い浮かんだんだな。と、いま分かりました。

 

【わたしがやっていた/今もやってることなど】
無駄かもしれないし、やらないよりはましかもしれない

  • 地下鉄の入り口/出口を毎日ランダムにする
  • 待っていたホームに最初に来た電車を見送る
  • 電車を降りたあと、ホームから出ていく最後のひとりになる(駅の規模や作りによるかも)
  • 差し入れは店の中で処分する、自宅に持ち帰らない(特にぬいぐるみとお花)
  • なんか怖いなと感じるお客さんのことはそれとなくスタッフに(愚痴の形でいいので!)知らせておく
  • 人柄に問題がなさそうでも、自分に会うために借金をしている客とは距離を置く(いきなり切ると刺激しそうな場合は3回に1回予約を受ける、とかでも)
  • NGや出禁やもろもろの対応を渋る店には見切りをつける
  • 接客の記録はつけておく(警察に相談する場合、時系列の記録が絶対ほしくなる)
  • 客が個人情報を喋った場合はそれもメモしておく
  • 親身に話を聞いて力になってくれた警察の方の名刺をお守りとして隠し持ち、心の安定を得る(今日も持ってるよ!)
2017-11-18 | カテゴリ: きらくなはなし, まじめなはなし | タグ: ,  

 

ワーカーズライブ:春一番の姉妹

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: 春一番の姉妹

これまでガールズヘルスラボに書いてきた小説の中で、たぶんいちばんほめられました。うれしい。ありがとうございます。
そして『良い百合』という言葉でほめてもらっている場面をたくさん目撃しました。今までもときどきそう言ってもらうことはあったのだけど、わたしは人の関係性に対してかなり大ざっぱ(とてつもなく大きくて仕切りのない「好き」という箱にあれもこれも入れちゃって、中で浮遊してる)なので、あっ百合に入れてもらえるんだ、って実感するとくすぐったかったです。名前がつくと照れちゃう感じして、すぐ「わたし名前がもうユリだからね〜」とか言ってしまうんだ……。

余談だけど、男性の同性愛を薔薇に例えるのに対して女性のそれ(いまは同性愛関係に限らずもっと広い広い範囲に使われますね)を百合と呼ぶ、と知ったとき、綺麗な名前だな、と同時に「うまいこと言う!!」とひとりひそかに盛り上がったんですよ、だって、それは、そのー、ユリって、おしべの先んとこ(葯っていうんだっけ?花粉の袋)をちょん切ったりひっこ抜いたりしてポイッと捨てちゃうじゃん!?

……でも、どうやらそこは関係ないみたいで、うそでしょー、と思ってます、いま。そう、いま検索してちがうと知った。えーーーまじかよーちがうのかよー。余談おわり。

 

過去を振り返ると、わたしもいろいろありました。
さくらちゃんだったことも、みずほちゃんだったことも、あったと思う。忘れられない女の子が何人もいます。忘れない、というだけではあまりに無意味で頼りなく、どうか幸せに暮らしていますようにといつも祈っています、無意味なことに少しも変わりないのに。

最近はキャストどうしがあまり仲良くならないようにシステム作ってる店も増えた気がするけど、ちょっと前は距離感近いところはもうどっこまでも近かったんですよ。同じ毛布をわけあってうたた寝したりとか普通にしてた。いや、あれはわたしのいた店の待機室の狭さが半端なかったというだけかもしれないな。異様にせまかったので……。
その店はいろいろといいかげんでした。求人広告には確かに『寮完備』と書いてあり、しかし実体はそのせっっっまい部屋のことだったもん。夜中に店閉めてみんな帰ったらここで寝ろや、を『寮完備』と書く。アクロバティック〜。
いまでは他にもいろいろとんでもない働き方をさせられていたことが分かるけど、当時はそういうものなのだと思って受け入れていました。摘発されていた可能性もあったわけで、その点はこわい。
でも、つらい思い出ではないです。

脱線しちゃった。

はっきりとカップルになっている恋愛関係じゃなくても、女性たちの間の憧れや友情など肯定的な感情、それゆえにときに生まれる相反するかのようなチクチクしたもの、そういうものたちが織りなす物語が幅広くまとめて『百合』と呼ばれるのだとしたら、風俗店ってそういうものいっぱいある(ように外から見える)かもなあ、と思います。女子校みたいに。
仲良くなったり、ならなかったり、意識しながらとうとう直接は言葉を交わせなかったり、憧れながら負けたくなかったり、助け合ったり、突き放したり、やっぱり手をつないだり。だけど、プライベートではつながらなかったり。あとたま〜につまらない(と本人たちも思ってる)ことで熱いバトルが起こったり!

勤務時間内だけ極端に距離感が近くなる場合がある、っていうのがけっこう大きいかもしれません。
私物のヘアアイロンを仲良い子に貸してあげたら「なにこれめっちゃいい!サラサラ!」と喜ばれたのであたしがいない時も勝手に使ってね、と言ってアイロンの持ち手にその子の名前をマッキーで書き足した(とったとられたにならないよう置きっぱにする私物には名前を書く)ら、次に出勤したとき彼女の手によって名前の間にハートのマークが足され「シーナ♡リサ」みたいになっててコンビ名かよってめっちゃうけたんだけど当のリサちゃんがたまたまいない日だったものだからひとりで肩を震わせ笑いを堪えた話とか、なんていうか、わたしにはちょっとしたかわいい思い出のひとつみたいなもの、
この世界独特の、なんだろ、閉鎖性とか秘密っぽさみたいなものも手伝って、ドラマチックに捉える人もいるかもしれない。そういうのを、「百合だ!」って呼ばれて消費されるとしたら、どうなんだろ。

……ってことを、ちょっと考えました。
どうだろ。でも、あんまり嫌な感じはしないかな。

たとえば刑事もののテレビドラマやなんかで、風俗業やホステス業が、それこそその閉鎖性や神秘性や、さらに不誠実だったりお金にだらしがない人間であろうというマイナスイメージを利用したうえで、物語を進ませるためのパーツとして雑に利用されているケースは溢れています。ふーん、と思っています。さぞかし使いやすくて便利でしょうなあ、って。

でも、じゃあ、同じことなんじゃないのって言われるかもしれないけど、そんなに嫌じゃなかった。関係性だけを面白がられたり、閉鎖性や被差別性をスパイスにされることを想像すると、たしかにとても嫌なんですよ、だけど、今回言われた限りではわたしはそういう感じをぜんぜん受けなかったです。

「女の友情は(男のそれに比べて)もろい」とか、「女の絆は男が現れれば簡単に壊れる」とか、「女ばかりの場所は陰湿で残酷」「女から女への恋心は単なる通過儀礼」「または男の(セックスの)良さを知らないから」といった一面的で有害な思い込みにNOを突きつけるものとして『女たちの物語』は力強く、また不可欠な存在だと思っているから、百合という言葉を褒め言葉だと受け取れるのかもしれません。
わたし自身は物語を読んだり見たりする時、ガールズラブでもボーイズラブでもどっちでもないズラブでも伝統的な異性愛でも「ズ」がふたりじゃなくても性愛的なラブストーリーじゃなくても、似たようなテンションで読んで同じ棚に入れてしまうタイプですが、それでも女の物語が生まれにくかったり、作り手の意に反する形の評価や消費をされやすかったりする感じはなんとなくわかる。なので、女どうしの関係性を描いた作品がもっと力を得て自由になれたらいいな、という気持ちもあります。
今回わたしが書いたものを読んで、すてきな百合だね、と言ってくれた人(女性がほとんどでした)が、ああ限定的でない何らかの肯定的な力(良さ、とか、わかりみ、というやつかな)を感じてくれたのかなあ、と思うと、正直にうれしいです。

女が女の愛情を信じられる世界であってほしい。それを取るに足りないもの、弱くもろいものだということにして力を奪い、別の力に従属させようとする存在から自由になりたいと、これまで仲間であった女性たちとの思い出を通じて、そう思います。

 

余談その2。その待機室が異様にせまかった店では辛い経験もして(店長に性的な関係を要求されるなど)、結局さいごは無欠から飛んだのですが、しばらく経ってからふと思い出して検索してみたらホームページがなくなっていて、すぐさま匿名掲示板を訪ねてみたらかつて働いた女の子らしき書き込みで「祝!○○(店長の名字)落ちぶれ〜!(IKKOさんかよ)」とあり潰れたばかりだということがわかったので、他にもたくさん悪事を働いていたのかと腹が立ちながらもほっとしました。
あのときへこんでたわたしに「アイス食べたくない?」と言って外に連れ出して話をしてくれた女の子のことも、ずっと忘れてないです(3月か4月で、まだちょっとアイスには寒くて、やっぱさみーよ、って言いながらその子はパナップ食べてた。わたしはなに買ったか忘れた)。

2017-03-14 | カテゴリ: きらくなはなし, まじめなはなし | タグ: ,  

 

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