ざまあよりも楽しいこと(仕事中の盗撮被害について)

久しぶりに自分のブログにアクセスしたら、昨年の今ごろはスケートのアニメにドボンとはまっていた文章が出てきて懐かしさと自分への「わかるわかる」にむせび泣きました(それにしても勢いだけで書いていて訳が分からないところも多すぎたのでこっそり書き直したりした。だせえ)。もちろん今も思いきりはまったままです。刺さったものが抜けないんです。幸せです。

今年のわたしはというと、吐く吐く詐欺にこそ遭いませんでしたがやはりそれなりにお客さん方に翻弄されて疲れ果て、同僚やスタッフさんと苦笑いしながら「来年もよろしくね」と言い合ってお別れしたところです。『客が財布を開けたら3800円しか入ってなかった事件』とかありました。それなりのホテルのそれなりの部屋だったので笑ってしまいましたが、油断できませんね。本人は「おかしい!10万は入ってるはずだ!」と騒いでいましたが、「今夜行ったお店を順番に思い出してみて」と優しく語りかけてみたところ数時間前の記憶がすでに曖昧モコモコのフワフワだったので、そのお金は落としたりスラれたりしたわけでなく、絶対自分で普通に使ったんだよ。
そこまで酔っているといつの間にかわたしのせいにもされかねないな、とこわくなり、「どこかのお姉さんにあげちゃったんじゃありません? モテるんですね♡」とよく考えると理屈が不明なことを言いながらサラッと失礼しようと思ったのですが、電話でいいからと叫んで懐から立派なお色のクレジットカードを出してきやがったため断る権利が消滅してしまいました。3800円を10万円だと思い込んだうえに見知らぬデリ嬢の前でカード番号を平気で読み上げる(よく読めたよな)までにセキュリティ意識が損なわれている、そのくらいへべれけであるという事実は変わらないため「この人いきなり吐いたりしないかな」とスリリングな時間を過ごしました。
しかしこんなに酔っていてはとても身体は反応しないだろうに、それでも他人のぬくもりがほしかったのだな、柔らかい肌に触れて眠りたかったのだな、とむりやり思い、優しく接しようとつとめましたが、蓋を開けてみたら確かに泥酔しているのに下半身は絶好調(たまにいるんだよそういう体質)、そのうち調子に乗って「お金あげるから」と禁止事項を求めてきたので(3800円くれるつもりなのかな???)と思いました。本人も気がついたようでばつが悪そうにしていましたが、ここで「カードで」と言ってくれれば笑ってあげられたのに惜しかったです。

待って、そんな話をしにきたんじゃなかった。

1年の仕事を振り返って、思うことがあります。

「やっぱ増えてきたね、盗撮」です。

同業のひとたちにとってはとっくに昔から切実な迷惑行為(なんて言葉じゃ足りない)だしツイッターなど見ていてもよく話題になっていたけれど、今年は本当によく見聞きしました。毎週毎週遭遇するってわけじゃないけれど、勤めている店の他の女の子にも、他店の友達にも、そして自分にも、何度もそういう話がありました。小型カメラ(と、それを用いたハウツー)が普及しているということだとしたら、来年はもっと増えるのかもしれません。

わたしがこの業界に入った頃はまだスマートフォンという言葉もなく、「大きい荷物の客に気をつけろ、鞄の口が開いててレンズが見えるかも」「怪しいときは電気を消せ」なんてお店から言われたのを覚えていますが、いま思えば平和な時代だったと言いたくなってしまうほどです。
(実際にそういう入念な下準備で乗り込んでくる計画的盗撮犯が少ないけれど存在したわけで、平和なんかじゃないよね)

体位を変えてほしいと言って女の子に後ろを向かせた隙に携帯電話で撮っちゃう、というのも昔はよくありました。ピローン♪ と音が鳴って、「いま撮ったでしょ」と言うと「え?何が?」とシラを切ったり、「消したから大丈夫だよ〜」とうそぶく人が時々いたものです。でも店のスタッフが確認するとSDカードの中にちゃんと入ってるっていう。杜撰でせこい手口だと笑われるかもしれませんけど、そういう人がいっぱいいたんだよー!

時が流れ(スマホの普及、無音カメラアプリの時代を経て)、いまわたしたちが悩まされているのは、はじめから隠れて撮るために作られた小型のカメラによる盗撮です。身の回りの日用品、文房具やお菓子やはたまた飲み物などに偽装したカメラがいろいろと、普通に売られていて誰でも買うことができます。長い時間録画できて、しかも部屋が暗くてもまあまあ鮮明な画像が撮れるようで、もうため息しか出てきません。勝手にどんどんテクノロジーしないでほしいものです。しかし正当な理由で必要とする人もいるのだ、とも思い、だとするとそれはやはり他人から侵害されて苦しんでいる人が、なんとか訴えるために証拠を得る手段として必要なんだろうなあ、と思うとますます心が苦しい。どこもかしこも大変かよ。

撮った動画がリアルタイムで転送されていたケースもありました。盗撮が発覚した場合に「使用したカメラを没収し、身分証のコピーをとって出入り禁止にする」みたいな対応をするお店もけっこうあると思うんですが、それだけでは足りない時代になってきたということです。

スタッフが部屋にやってきたとき、慌てるよりもきょとんとしている人が多いように思います。発覚することを恐れながらやっている人ばかりではなく、バレるなんて想定もしていない(または、バレたところで店が介入するほどのことじゃないと思ってる?)人がけっこういるということなのかな。
「○○(店名)の者です。お話を伺いますので本日のサービスはこれにて終了させていただきます」とまで言われてもまだ理解できず、スタッフに向かって「なんだ君は」と偉そうにしていた人もいました。その無自覚さ、とても怖かった。後になればマヌケで笑える場面ですが、それは後になったから笑うしかないというだけのことです。

そして証拠を突きつけられもう逃げられないとなると、そこで初めて謝るんですよね、スタッフに。わたしにではない。
「すいませんでした」「勘弁してください」「会社にだけは」「妻子がいまして」って。家族構成どうでもいいっつうの。今後の自分の処遇だけに興味があるのだと思います。彼らにとって失敗とは、してはならないことをしたことではなく、それが店にバレてしまったことなのでしょう。
若い人、中年の人、一見の人、常連の人、お金のある人ない人、いろいろです。でもまだわたしに向かって自分から頭を下げた人はひとりもいません。もし下げられたとして何の足しにもならないし「じゃあ最初からするなよ」と思うだけ、むしろ余計に腹が立つかもしれない話ではあるんですが、それでも悲しいことだと思います。とことん舐められているわけですから。

今年は「何年も指名し続けてくれて、良い関係を築けていた(と、わたしは思っていた)お客さん」からもテクニカルな盗撮をされました。これにはさすがにびっくりしましたし、精神面のショックが非常に大きかったです。メンブレもいいところです。
彼に気づかれないよう店にSOSを出すとき、やられていると分かっているはずなのに「でも、でも、何かの間違いでは」「わたしの勘違いでは」という思いを拭えずにとても混乱しました。情けないほど、しっかりできませんでした。かんたんな判断なのに、できなかった。

彼のことを考えていたこれまでの時間、身体のくせやプレイの好みを観察して把握し、どうすればもっと喜んでくれるだろうかと試行錯誤を繰り返してきた数年間とその間ずっと抱いてきた感謝の気持ち、自分の仕事を気に入ってもらえていると感じた嬉しさなどが、すべて一瞬でゴミになった、なくなってしまった。それがすぐには受け入れられず、腹を括れなかったのだと思います。
それから、自分がしようとしていることが彼の心や生活にどんな変化や影響を与えるだろうかということも、考えられなかったし考えたくないのに、考えようとしてしまうのでした。「こんなにいい人なのに」と。明らかな禁止行為をした人に向かっていい人もなにもないのにね。

幸いわたしは普段店から「盗撮に関しては不審なモノや行動があった時点で男子スタッフに丸投げしてくれてかまいません、万が一勘違いであっても紛らわしい行いで恐怖を与えた責任はお客様にある、と考えるようにして勇気を出してください」と言われていたため、最も守るべきものは彼でなくわたしだ、店は味方についてくれるはずだ、と心を立て直すことができ、最後には「助けてください」と言えました。言えてよかったです。

そもそもなんのためそんなことを、と思う人が多いかもしれません。何のためなんでしょうね? わたしも分かりません。

趣味で、という人はいると思います。趣味としてあとで見返して楽しむために裸の女性(または、自分がサービスを受けている時の、というところに意味がある人もいるかもしれません)の画像や動画が欲しい、でも、撮らせてほしいと頼んでもどうせ無理だから/嫌われるに違いないから/相応の謝礼などを払うことになっても嫌だから/頼んだだけでブラックリストに入りそうだから/カメラを意識していない自然なものがいいから/などなど、の理由で、気づかれないようこっそり撮ってしまえ、と思いついてしまった人、けっこういるだろうなと想像します。

それから、撮った画像や動画をなにかに利用する人もいると思う。人が見たがるようなものをインターネットにアップロードして、お金に換えることもできる時代です。または同好の士からいいねをもらって心を満たす、あの人はさすがだと尊敬を得る、こいつウケるぞと一目置かれる、という使い道もあるでしょう。目にする機会がないとピンとこないかと思いますが、街中で盗撮した女性の画像を載せてワイワイ盛り上がっているツイッターアカウントは実は腐るほどあります(本当に腐って土に還ってくれればいいのですがそうはいかないらしいので、これのことかと思った際は通報してもらえたらと思います)。
デリヘルを呼んで隠しカメラで生配信、という事件もありました(逮捕されたかどうかはよく分かりませんでした)。

それから、これはわたしが勝手に想像しているだけなのですが——撮る、ということそのものに意味がある人。画像や動画に使い道があるわけではなく、ただ相手に知られず撮影に成功することを楽しんでいる人、いるんじゃないかなあと思うんです。
本当なら嫌がられるはずのことを、まんまとやってのけているってこと。ざまあみろ、という気持ちが心躍らせ、高揚させるのではないかって。

もしかしたら彼らにとって、わたしたちはどこか気持ちの良い存在ではないんだと思います。
ちょっと服を脱いで触らせるだけでこっちに何万円も払わせて、別の男やイケメンにならやらせてるはずのことを「規則なので」と断ってくる、生意気なあいつら。
または、何も考えておらず頭も悪いくせに女だというだけで金になって、きっとめちゃくちゃ儲けてて、人生チョロいとほくそ笑んでいるに違いないのに世間からは「事情があるはず」「頑張っている」と擁護され可哀想な弱者の顔をする、癪に障る風俗嬢たち。
それか、いつもあんなに笑った顔を見せて楽しそうにしているのに、食事に誘っても連絡先を聞いてもなしのつぶて、俺のことどう思ってるのか問い詰めてもいい返事をしない、自分が幸せにしてやると言っているのにどうしてそれが分からないのか、でもお店を通して呼ぶとちゃんと来る、納得いかないあの子。
ほかにももっともっといろんな形があるとは思うけど。

「バカ女め、ざまあ(笑)」という気持ちが、やってやった、という達成感や優越感が、彼らをほんのひととき癒しているんじゃないか、と、ふと思ったのです。そしていつの間にか抜け出せなくなってしまうんじゃないかって。
そういう意味のことを直接言われたわけじゃないです。わたし自身が何度か被害に遭ってみて、そしてその後の顛末を知った(もちろん本人と接触はしないので、店のスタッフや対応してくださった弁護士さんや、時に警察の人を通じて聞いた範囲内ということになります)上で抱いた勝手な感想ですし、盗撮する人の心の内を想像してみたってなんの足しにもなりません。たぶん来年も撮られるんだろうなと思うと気が重いです(むしろもっとテクノロジーがイノベーションしやがって見破れないケースが増えるかもしれません)。でも、ついつい考えてしまうんですよ、こんなにも気分の悪いことを。本当なら対等なはずの人から舐められ見くびられ馬鹿にされる、とっても迷惑で、恐怖なことなのに。本当にいやなことなのに。

盗撮していて、やめたい、と思っている人。
やりたくないことをやめられなくて苦しんでいるなら、それは心身の不具合かもしれません。話を聞いてくれる人も見つけにくいでしょうし、親しい人にほど話せないことだろうと思います。医学的なことは分かりませんがこの世にはいろいろな依存症があって、攻略法を考えている人たちもたくさんいるはずです。ひとりで勝てる敵ではないとしても、戦う方法を知っている人がいるかもしれません。あなたがあなたをちゃんと助けてあげてください。そのために他人に助けを求めてください。「これで最後だから」と言いながらデリヘルを呼ばないでください。わたしたちは何もしてあげられません。おまえの不具合に巻き込むな。
それから、見つかってもろもろ失うことを心のどこかで望んでる人、あなたも必要なのはデリヘルじゃないです。「見つかったらやめられる」という考えもだめです。そこには必ず、すっごく傷つく人がいます。おまえの破滅願望のために人を利用するな。

盗撮していて、やめる必要を感じていない人。
あなたが盗撮によって得ているもの、お金だったり愉しみだったり、その代わりになるものをわたしがあげることはできないので、やめろと言ってもしょうがないことですよね。だからわたしはただあなたを憎むことしかできません。ので、憎みます。
憎んで恨みながらも一応、盗撮よりももっと楽にお金になることや、もっとおもしろいって思えることに巡り合えたらいいねって思います、いちおうね。いますぐ探しに行ったら間に合うかもしれません、盗撮はいつか必ず見つかるので、それより先にやめられた人だけがしれっと生きていけるのです。しれっと生きていくことが幸せかどうかはわたしにはわかりませんが、清廉なフリをしてしれっとやっていくルートをたぶんあなたは望みますよね。だとしたらバレるより先にやめるしかないんじゃないですか。ていうかやめろ。しょうがないことでも言うわ、言うだけタダだから。やめろ。今すぐやめろクズ。

「ばれなければ、誰も傷つかない」派の人。
心優しいあなたが道路に飛び出した子犬を助けようと自らの危険を顧みず身を挺し、不幸にも事故に遭って命を、または一命はとりとめたものの以前のような暮らしができなくなり、お家に戻れなくなり周りの人とスムーズに意思疎通ができなくなってしまったとします。そのとき、あなたのスマホとメモリとハードディスクに入ったあのデータやそのデータが即時永久破壊されるシステムを開発してから言え。クラウドにもハンマーとドリルで穴を開けろ。わたしはむちゃくちゃなことを言っています。でもあなたも同じくらいむちゃくちゃなんですよ。いつでも引き返せると思っているのはおまえだけだよ。バーカ。

どちらさまもよいお年を。ざまあみろって思う楽しみよりも大切な楽しみが、来年にはみつかりますように。

その後の話

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