お題箱サービスでいただいた、わたしにとってはとっても難しい質問にめちゃくちゃ頑張って答えたので載せておくものです。

こんにちは。わたしのお返事もまとまらないものになると思いますがすみません。セックスワーク関連について体系的に学んだりしてはいないので、こういう質問に具体的に明瞭に答えるのはとても難しいです。ただ内側にいますというだけなので。
まず、医師の診断があるかどうかに関わらず、自尊感情の損なわれだとか見捨てられ不安、それをもたらした環境の問題などにつけ込まれて、というケースなら、もちろんあるはずです。そして実際には「強要」と断定ができないようなやり口のことが多いと思います。巧妙というか。
そういう、誰かに利用されてセックスワークに差し向けられる、特にそこで得たお金を回収する本人以外の人間があらかじめ待機しているような深刻なケースなどをどうすればいいのか、というのは大事な話ですが、だから、気軽に答えられないです。
例えば先日は戸田真琴さんのツイートをRTしましたが、そこにあった「すべての演者が無条件で契約を破棄できる」というのも、正直わたしは分かってないんです。なんて言ったらいいんだろう、無条件で破棄できる契約だから、という理由で何か困ることになったりしないか…!?とかよぎるんですよ、でもよぎるだけでそこから先に行ける法律の知識なんてない。
みっちり勉強するような時間もとれない、もう、自分の人生の喫緊の諸々で手一杯で。知識はないわAVは畑違い[1]似たようなものと捉えられて、外部から一緒くたに語られていることがありますが、売っているものがまったく違いますよね?だわ、なんのアイデアも浮かばないわ、です。うかつに法の理想など語れません。
なので、そんな者でも語れる範囲内で、今の段階で知っていることをもとに、日ごろ考えてることなどを言います。
先ほど書いた「そこで得たお金を回収する本人以外の人間があらかじめ待機しているような」ケース、これは恋人やホストなど他人であることも多いけれど、夫や親といった家族であることもまあまああります。
「そそのかされて風俗に」「強要されて風俗に」という被害への危惧や嫌悪を持つ人は多いと思うんですが、それが語られる時、つけ込んでいるのが家族親族である想定をされていることはとても少ないように思えて、それは気になるときがあります。それぞれの深刻さがありますが。
それから、質問者さんの文にある「風俗に行く前に生活保護に繋げるなどして助けるべき」。この「行く前に」という言葉が、「初日から激烈やばい客にぶち当たってケガをしないとも限らないのでその前に」といった意味であればいいのですが、「風俗に行く」が何か不可逆なもの、風俗で働くという経歴や経験が、なにか引き返せない、取り返しのつかない傷や汚点のように思われていないかと気になります。一度働いてしまったら救われないなんてことは絶対にないですので。
セックスワークで人生の困難が好転する人も、実はそれなりにいます(手元にお金ができることで解決する問題がめちゃめちゃある、というのは分かってもらえると思うし、あと人間は実体のある現金を手にすることで、冷静になれたり、自分は自由だと思い出せて強くなれたり、そういうのもあるから)。一方で「やってみたら思った以上に向いてなかった」も、まったく珍しくありません。
もし、支援をする立場の人が、さっき書いたような「取り返しがつかない」という価値観、スティグマのイメージを持っているとすれば、実際に現在風俗嬢の肩書きを持っている人は当然相談しにくくなりますよね。そうして結局出会えるのは、心や身体に大きな影響が出てしまってからになるかもしれない。
「風俗で働き始めると生活サイクルや本人の意識の関係で、支援にアクセスすることのハードルが一段と上がることが考えられるから、その前に」という意味だったかもしれません。だとしたらそれは確かにそうです。下がっていってほしいハードルです。
「風俗に行こうか迷ってる人」と「もう風俗嬢」では扱われ方が何か変わるんじゃないかというような不安、たぶんあると思うし、それは必ずしも取り越し苦労ではない気がします。
「自分で選んだ人、誇りを持ってやっているという人ならいいけど、そうでない人は救われるべき」という言い方はわりとたくさん流れていると感じます。これが一般的な考え方になっていくと「自分で選んだし、頑張るつもりだったし頑張っている(が、うまくいっていない)」人は社会を頼る力など奪われますよね。
自分で選んだことの責任は自分で取らないとね、というようなことはよく言われますが、それって、その「責任を取る」とはなんだという前提? と思います。そこが明らかにされることなく、なんかこう「頑張る」とか、そういうホンワリした話にされていたりするので。
「風俗で働くしかないのかと悩んでいます」という人をサポートしながら、全く同じ表情で「風俗で働くしかないのかと思い働いてみたところいよいよ詰みました」という人の話を聞いて力になってあげられるような環境がしっかりとあってほしいですし、それを信じられる状態であってほしいです。
そりゃあうまくいっているところだってどこかにはあります。でも、なんかもうただの愚痴だけど、まだまだなんですよね。どこもかしこもまだまだです。例えばデリヘルで客が悪事をはたらいた際には警察呼ぶよって話をしたら(デリヘルは違法だと思い込み、だから警察には頼れずヤクザさんを呼ぶんでしょとさらに思い込んでいたような人に)やたら驚かれたりしてこっちがびびる、みたいなことってよくあるんですが、それはそれとして呼んだ警察が「全然真剣にならない」「職業を持ち出してこっちの羞恥心や罪悪感をあおり諦めさせようとしてくる」っていう形の職業差別も普通にある。これも全員じゃないけどね、全員ではないからといって珍しくもないです。結局まったく割のよくないガチャです。課金して再チャレンジもできません。
そしてこの点は、生活保護関連をはじめとした福祉の窓口も同じようなものだったりするんです。「わざと難しい言葉を使って萎縮させる」とか。
そうは言っても助ける側も人間なんだから、親身になってあげたい人とそうでない人には差が出て当然でしょう……というのも、個人の感情としてはわかるけど、システムとしてはだめですよね。そうやって当然のように共感や人情で動かそうとするからいつまでもよくないのではないかと思います。優しさとか思いやりとかで人を救おうだなんて無理な話で、そこから脱する技術とか理論のようなもの、ちゃんと研究している分野ってぜったいあるだろうと思うから、いいかげん成熟してほしい。これは切に思います。
支援者はもちろん支援をしてくれる人です。が、構造としては諸々の搾取と同じ場所にいて、そこから動けはしない。それを理解した上で、その場所から可能なことがあるはずです。
(そしてその問題を追い求めるべきなのはわたしではないはずです……。)
きりがないのでまとめます
― 椎名が世の中に望んでいることをあげるとしたら ――
・家族は助け合うべき、それがまっとうな姿という規範がこれ以上染み込まないでほしい
・自由意思と自己責任が自動セットだという思い込みを見直し、切り離せるようになってほしい
・福祉と警察は職業差別をするな、せめてあと少しでも信用させてほしい、現状かなりだめ
・上記のような場において、助けたいと思えない人のことも助けられる技術の学びを発展させてほしい
・セックスワーカー当事者が問題に関する最適解をなんでも知ってて分かりやすく答えられると思わないでほしい、日々の仕事の傷つきとコンフリクトするとまあまあつらいよ
―― ついでなので ――
・客たち!ここまで話しても登場しない客たち!!!おまえらがちゃんとすればなんとかなることが山のようにあるのに、なぜさまざまなセックスワークの話題の場でさほど話題にのぼらないかわかるか
全員おまえらを半ばあきらめているからだ、決して許されているのではない、見捨てられているから呼ばれないのだ
こうして力を奪えてしまうほどにひどい過去をずっとずっと積み重ねてきたのが「客」という属性のものたちなのだ
(例えあなたがどれほど善い人間であっても歴史は一切覆らない、できるのはこの加害の歴史に乗っかるか降りるか選ぶことくらいだ)
わたしは絶対に見捨てない、つまり許さない
どこまでも見てやる、変われ、変われ、変われ、変われ、目をそらすな誤魔化すな、いずれあなた方の中には変化する者が音もなく増えるだろう、気づいたらお前が最後の一人だ、その時になってなおすっとぼけた半笑いのまま息の根を止められるか今のうちに変わるか選ばせてやる
わたしは変わろうとする客たちとすでにおまえが一生知ることのない蜜のような時間を過ごしている
全部読んでくれた人、ありがとう。たいへんでしたね。これを全部読んでくれた人は、たぶんわたしのよくやってる長スレッドなどもいつも全部読んでくれているのではないでしょうか。拙者スレッドつなげすぎて投稿するとき青いバーの進みが目で追える之助と申す。いつもありがとう。
↑1 | 似たようなものと捉えられて、外部から一緒くたに語られていることがありますが、売っているものがまったく違いますよね? |
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