セクシュアルヘルス

HPVワクチンの話(3)接種しました

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↑むだにはしゃいでみた

(2)のつづき

ようやくここまで来ました。実践編です。
0210b予約時間の少し前にクリニックに到着。問診表と体温計、そして「HPVワクチン(ガーダシル®)を接種される方へ」という文書を渡されます。よく読みましょう(でもたぶん自分で打とうと思っていろいろ調べてきた人にとっては知っていることばかりだと思うので、復習みたいな感じです)。
同じものがアップロードされているのを滋賀県庁のサイト内で見つけました。
ガーダシル®を接種される方へ / pdf:152KB

体温を測って、問診表に記入。受付の方に渡します。
問診表内に記入する必要のある個人情報は、

  • 住所と電話番号
  • 氏名(受ける人が未成年の場合は保護者の氏名も)
  • 生年月日と年齢
  • 最近病気しましたか?お薬のアレルギーがありますか?など各種予防接種でおなじみの質問

です。「性体験がありますか? (いいえ/はい)」みたいなマルをつけねばならなさそうなイメージがあるかもしれませんがそんなことは聞かれません。婦人科だと初経年齢とか妊娠歴とかきかれること多いけど、そういうのもここではないです。
0210ba次に診察室に呼ばれて、医師と問診をします。
わたしは体温がちょっと高かったので(基本的に37.5℃を超えている人は受けられないガイドラインのよう。確かインフルエンザもそうだよね)、「風邪っぽい予兆みたいなものは特に感じていませんか?」と確認がありました。平熱が37℃前後であること、今日も特に不調がないことを伝えてオッケー。
それから、シーズンなのでインフルエンザの予防接種を受けていたため、日数が充分にあいているかの確認。インフルエンザは1週間の間隔が必要なんだって。
0210cまた、性体験後の女性が接種する意義についての考え方と、定期的な検診の大切さをもう一度おさらいし、 接種のスケジュールや費用についても丁寧に説明していただきました。
そして刺してもらいます。うふふ。
「今まさに刺しまーす!って体でいいかしら?あ、箱も入れるといいかな?ちょっとここで持ってて☆」とおちゃめな看護師さん。接種するときはこうして肩に近いところのお肉をぐぐっとつまんでもらいます。
さきほどもらった文書に「接種後に、注射による恐怖、痛みなどが原因で、気を失うことがあります」という超こわい記述があるのだけど(これビビるよね!おそろしいよね)だいじょうぶです。そんなに痛くはない。ただの注射です。針がありえないほど太いとかそんなサプライズだったらどうしようかと思った。ふつうだよ!

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でも確かに、HPVってインフルエンザや風疹やなんかに比べたら圧倒的に得体がしれないし、まだ若い、というよりも幼いひとたちにしてみればすさまじい緊張や恐怖があるかもしれない。いったい何をされてしまうんだろう、って。どうせ理解できないだろうと説明をないがしろにするのはよくないけど、でも何をどこまでどんなふうに説明すればよいのか難しそう。なぜセックスがからむだけで物事は難しくなってしまうんだろう。いやセックス難しいしな。というかセックスを取り巻くさまざまなものたちが難しいんだわ。

そういうことを悶々と考えてるうちに終わってました。上の写真はわたしのカルテと、終わった後のグッズ一式。万が一アレルギー反応などが起こった場合のため、接種後30分は院内で安静に待ちます。ソファでゆったりとiPodの音楽を聴きながら、いただいた冊子を眺めて過ごしました。
「ガーダシルを接種された方へ」接種後の注意点や副反応の説明がかかれています。日本でガーダシルを製造販売しているMSD株式会社がつくっているもので、可愛らしくカジュアルな雰囲気。
30分経ったら、体調に変化のないことを確認して、今日はおしまい。翌日まで過激な運動はできません(元々ぐうたらなのでしません)。お風呂は、接種部位をゴシゴシしなければ大丈夫。赤みや痛みの出る人は多いみたいで、看護師さんのおひとりからも「わたしの娘が接種したときは、筋肉痛にそっくりになったって言ってたわよ」とアドバイスがありました。わたしの場合もその日の夜からぷっくりとした赤い腫れと引きつれるような感覚が出て「これのことね……!」とほくそ笑んだものです。たしかに筋肉痛に似てた。それから、熱っぽくもなりました。あとかゆい!すごくかゆかった!

発熱やかゆみは、1〜10%未満の頻度で起こるそうです。わたしの身体がワクチンを「なんか敵が来たぞーやっつけねばー!」と認識しているんかね。2〜3日でなくなりました。
0210g領収証。ぜんぶで3回接種しますがこれはまとめて支払った金額です。費用は各医療機関によって変わると思います。後日わたしの母親に「あれってさーいくらしたの?」ときかれて答えたところ「そうか……いい時代になったけど……金はかかるんだわね……」と言っていました。うむ。高いか安いかということはひとくくりに言えないけれど、がんになった場合や、ワクチンを接種せずこまめに検診を受けた場合など、いろいろな可能性を考える必要がありそうです。

余談ですがわたしの母親は、わたしが婦人科で見聞きしたことの話をよく聞いてくれます。若いころ婦人科系統の病気を患いとても苦労をしたので、現代の医療のようすを聞き「ああ、今の人はもうあのような思いはしないで済むのだ」と知ることがうれしいようです。「いい時代になった」とよく言っています。彼女が初めて婦人科へ行ったのは40年ほど前のこと、膀胱炎になったときだったそうですが、「婦人科」というものにかかったことが家族に知れてたいへんな大事件になったそうです。恥を知れと激しく叱責され(嫁入り前の娘が行ってよい場所ではないということらしい)、今でも思い出すと悲しく辛くなるといいます。それがたった40年ほど前のことだとは……。

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写真を撮ってブログに載せてもよいか訊ねたときに、「どんな選択をするにせよ、最初の一歩は知ることから始まる。ひとりでも多くの人が納得いく結論にたどり着くために、まず存在が正しく知られなければなにも始まらない。どうぞあなたの言葉でお友だちに語ってあげてください」と、先生から言葉をいただきました。そしてそばにいた看護師さんから「本当は、あなたのように定期的にがん検診に来るタイプじゃない方の人にこそ、知ってもらわなくてはいけないのだけどね」と。

 

わたしの話はこれでおしまい。

 

わたしはこれらの文章を、みんなもするべきだ!とかあなたもした方がいいわよ!という気持ちで書いたわけじゃない。もし自分と同じ年齢・状況の友だちがいたとしてもただやみくもにに勧めることなどできないし、もしも重篤な副反応が出たとして責任を取ることも当たり前だけどできやしない。わたしがこの先子宮頚がんにかかることもあるかもしれないし、その時「高い注射までしたのに!」とは言えないことをわかって、今回こういう選択をした。
その判断に賛成できないと思う人もいるだろうと思うし、やらないことにしている人に何か口を出したいわけではまったくない。
ただ、同じ「やらない」にしても「何だかよくわからないしやらない」と「考えてみて、やらないことにした」では全然違うものだ。

これは個人的な感覚だけど、とくに女の人が人生や性について、時に自分ではない誰かのために遠慮をしたり、決定権を完全に持てていないようなことが、目立っていないところに実はあるなぁと感じることがある。わたし自身はどちらかというと声が大きい方かもしれない(こんなブログを書いているくらいだから)。それでも、「なにか」に対して遠慮している瞬間は、やっぱりある。

HPVワクチンがインフルエンザや他の病気のそれと同じように受け入れられてはいない側面には、やっぱり「セックス」でうつる、ということが大きく関わっていると思う。わたしたちの脳みそはどうやらその言葉に弱く、しばしば考え尽くすことができなかったり情報を仕入れることに積極的になれなかったりするみたいだ。ほとんどの人の人生に何らかの形で登場するものなのに、一定の距離を取っていなければならないような雰囲気を、時には大人の男性からも感じることが確かにある。
(がんを予防できるワクチンとは、いったいそれはどんなものなんだろう)
そんなあたりまえの関心さえ、なにかあまりほめられたものでないとされるような、慎まなければならないかのような意識が女の人のこころにありそうなことがわたしは心配だった。だから「やった場合はこんな感じだったよ」ときかれてもいないのにしゃべってみよう、と思った。

0210hこの冊子の最後のページには「大切なお友達にも伝えてあげてください」という言葉とともに結婚と出産をイメージするイラストが描いてあるけれど、健康でいたいのは結婚と出産をするためじゃないし、なにもその2つをやるかどうかだけが女の人生の分かれ道じゃない。その2つのイベントを経た人だって、テンプレートにのっとって自動的にそこへ運ばれたわけじゃなくそこには必ず「選択」があった。選択の連続で人生は続く。その決定権を、よくわからない力に委ねることなくその女の人自身がしっかりと持っていられますように。迷い悩んだときには、助けになる存在がそばにありますように。いつでも、自分の人生に関わることについて「知る」こと「選ぶ」ことを遠慮せずにいられますように。

そういう思いで、乱文ながら今回のことをインターネットに書きました。
わたしの経験したことが、あなたの選択の資料のひとつになればとてもうれしいです。

快く撮影を許可して協力してくださったクリニックの方々に心から感謝しています。
ありがとうございました。

2012-02-12 | カテゴリ: まじめなはなし | タグ:  

 

HPVワクチンの話(2)

(1)のつづき

わたしがHPVワクチンの接種は自分に関係ないとみなしていたのは、ひとえに「まだセックスをしていない10代前半の人のためのもの」というイメージのためだった。セックスしてないどころか性的サービス業に従事している自分には関係ない、どうせ感染しているのだから無意味だと考えていた。

本当にまるっきり無意味なんだろうか。その思いが芽生えてしばらくいろいろ探したのち、この論文に行き当たった。
「産科と婦人科」2010年9月号

抜粋したものをここで見ることができる。
産科医療のこれから

ワクチンに対する考え方は本当にその人ひとりひとりで異なるものだし、特にHPVについては「これが正解、これが世界標準」というようなものがまだあるわけじゃない。しかし「処女なら打ちなさい、そうでないならあきらめなさい(極端な言い方をすると)」なんて単純なイメージは全くの誤りだと知った。

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2012-02-12 | カテゴリ: まじめなはなし | タグ:  

 

HPVワクチンの話(1)

わたしが子宮頚がんというものを強く意識し始めたのは、2010年のことだった。

前の年の終わりに日本でサーバリックスの接種ができるようになったニュースに対しては、ようやくだ、よかった、という感想を持ったものの、自分には(この先子どもを養育しない限り)直接関係のないこととして受け止めていた。「10年遅いよ」と思った。
わたしはもう、大人になってしまったから。10年前ならば間に合ったのに。

ところが、このことについてもっと考える機会がもたらされることになる。2010年の夏、子宮頸がんがもう一歩わたしのそばへ近づいてくる出来事があった。
それこそ10年ほど前から好きで見ていたウェブサイトを運営している女性の日記ブログに、その病名は出てきた。少し前から、病院でのごはんやベッドの写真、入院するよという記述などがあって「今日はお泊まり!」だとか「思ってたよりボリュームあって太っちゃいそう」なんて元気に書いてくれてはいたのだけれど、どうしたのかな、とちょっと心配していたところだった。そして、記された「子宮頚がん」という文字に、わたしは息を飲んだ。 つづきを読む

2012-02-12 | カテゴリ: まじめなはなし | タグ:  

 

BAD girl and BAD disease

それは昨日のこと。twitterをみていて、暗澹たる気持ちになってしまった。
やりきれなくて、それをtwitterで告白した。

これについていろいろ考えていて、暗澹たる気持ちになってしまった。
http://t.co/1zdP3YY #

リンク先にあるのは、ポケットティッシュのような見た目をした紙だ。尿をつけて色の変化を見ると、尿のpH(酸性とかアルカリ性とか)がわかるのだという。それが何の役に立つかというと、性病の早期発見ができる、らしい。ヤバい菌がいるとアルカリ性になり、中性ならセーフ……そういうことらしい。

いいえそんなわけはない。STDにかかった人は全員おしっこがアルカリ性になるだなんて!ばかげているにもほどがある。

(STDの検査を受けたことのない人は、わたしのうろたえる理由がよくわからないかもしれない。少なくともこれまでにわたしがクラミジアなどの検査を受けた医院・病院(思い出せる範囲で8軒ある)で、尿のpH検査を行ったことは一度もない。綿棒のようなものを使って膣内の分泌物を採取するか、あるいは採血するか、そのどちらかだ。)

だけど商品の説明だけを読むと、まるですばらしいもののようにみえた。病院に行って名前や顔を出すこともなく、自宅で手軽にチェックできて、使い終わったものはお手洗いに流すことができて、そして何よりもとても安価で。いいことづくめだ。
でもそれは、当たり前だけど「信頼に足りるデータが得られるならば」のお話。そうでなければ何の役にも立たない。立たないどころか、もっといやなことが起こってしまう。
つづきを読む

2011-09-08 | カテゴリ: まじめなはなし | タグ: ,  

 

ガールズヘルスラボのコラム

わたしの文章が載っています。

風俗嬢コラム Worker’s Live!! – クラミジアとわたし

今回は「STDにまつわる短いストーリー」を書きたいと思っているので、この文章は100%わたしの体験談というものではなくフィクション成分がだいぶあるのですが、書かれている思いはまぎれもなくわたしの長年抱えているものです。クラミジアをはじめSTDに対する、複雑な思い。

STDは日常的にセックスをする人であればいつでもどこでも感染の可能性があり、それは「予防の対策はいろいろあれど、100%が難しい」という点で風邪やインフルエンザとおなじなのですが、だからといって「風邪ひいちゃってさー」みたいに「クラもらっちゃってさー」とは同業の人間どうしであってもなかなか言えることではありません。

STDにかかる、ということが、人間として劣っている、ふしだらな者であることと同じ意味になる。
接触する相手やその方法を自らの判断と査定で選んでいるとは言えないセックスワーカーの間でさえ、そういう空気は流れているのです。
そしてなぜか、客に対してもそれを告げることは難しい。告げれば「病気を撒き散らし迷惑をかけた」ということになります。そのウイルスが、客から受け取ったものであっても。

ウイルスは人を選びません。人の心を見ません。どんなに誠実な心で、将来にわたって共に過ごすことを前提にして臨んだ性行為であっても、感染する可能性は風俗店で行われるそれと一切変わりありません。

ならば、人生のどんな場面でも「あなたは最後にいつ検査をしましたか?」と訊ね合って結果が印刷された紙を交換してから、ベッドに入るようにしましょうか。
そうでなければ、感染した人を「軽率だ」とは言えないのです。

 

そんなような、ややこしくも避けて通れないわだかまりを、少しずつ書いて行こうと思っています。

けれどSTDについて考えることは、明るい話題ではなくとも奥の方に自分や他人のからだやいのちについて思いをめぐらせるどこまでも広く自由な大地も広がる可能性が埋まっているように思います。そんなこともどうにか表せたらいいけれど。

またそのうちに更新されるので、よろしくお願いします。

 

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