ガールズヘルスラボ

ワーカーズライブ:寒くなくなんて、ない

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: 寒くなくなんて、ない

ガールズヘルスラボの連載です。

このサイトの作品についてはすべて「経験を元にしたフィクション」と明記してありますが、今回について補足すると

外国人を接待する目的での利用だと言って仲介人を名乗る日本人から依頼を受け、その人物に対してのみ店の者が「当店は風営法に則っており本番行為は云々」という話をした状態で現場に行かされ、しかし蓋を開けてみたらサービスを受ける外国人は全くそれを理解しておらず日本語も通じず絶体絶命となったピョン♡

……という部分に関しては、わたしの身にかつて実際に起こったことです。
もうどれくらいかなあ、何年も経っていますけど。

 

イレギュラーな仕事ではありますが、全くないということもなく、しかし遭遇してしまったら最後というわけでもなく、たとえば現在わたしが働いている店では、まず確実にお断りする案件です。
ただ、それはある程度の期間勤めてきているからわかることであって、その店がどういった方針で仕事を受けあるいは断るのか、その基準を隅々まで働く前に確かめる術はありません。方針そのものがしっかりと存在しない(店長の気分次第とか)、みたいな店もありますし。

個人的な経験からの印象では、面接時に「外国の方も接客する機会がありますか」と訊ねたときのお店側の答えとして一般的なのは
「いや〜ウチは断ってる。まあやっぱりノーセックスって文化じたい馴染みがないだろうし、通じないと厄介なことになるしねえ、だから安心してください」
です。
ええ、先述の経験をした店でも、入店するときはそう言っていましたとも……。

 

わたし自身は英検2級を持っていて(とはいえその大半は既に忘れてしまっている自覚がありますが、それでも)ちふゆちゃんよりはまだほんの少しだけ、英語ができるはずなのです。

しかし「わたしのようなコールガールであっても、日本では合法のサービスとして本番行為を提供することはできない。オーラルセックスと素股、また店の基準で定めたその他の行為なら問題ないのでその範囲内で楽しんでくれ。あなたの世話係がなんと言ったか知らないが、なんでもできる、好きにできると言ったのであれば残念ながらそれは嘘である、虚偽の申告である、こちらの本来のルールに従っていただかないと困る」という主旨のことを説明することは困難でした。それはもう非常に、困難でした。

やっとのことでなんとか言えたとしたって、「キミの発音なんだかよくわからないよ」とでも言われて無視されたらもうおしまいですしね。

(ただ、この「しらばっくれられたらお手上げ問題」はべつに外国の方ゆえでは一切ありません。
だって日本人のお客様が日々「え〜そんなキレイゴト言ったってさ〜」とか「え〜この値段ならできると思うのが当然でしょ?」とか「カタいこと言うなよ〜」とか言いながらごりごりルールを無視しようとしていることなんて周知の事実にもほどがあるからね☆ 問題は、「言葉が通じず、禁止されていることだと分かりませんでした」という言い訳があとから成立しちゃうな、という危惧が現場でたたかう人間の心を重くさせるという点です。)

 

誤解してほしくないのは、決して

外国人のお客さまからの仕事を受ける店 → 杜撰でいいかげん
断る店 → 安全でしっかりしている

という単純な基準でははかれない、ということです(単純な基準、て書いた瞬間にまたコレのことを思い出した)。
わたしとしてはただ、受けるのならそれ相応のサポートとバックアップをキャストに対してしてほしいなあ、と思っているだけなのですが、うーん……今はまだ、夢物語に近いことかもしれません。
ただでさえ普段から、運命を利用者の良心ひとつに委ねられている部分が大きいですもの。ハァン(ため息)。

店(もちろん先ほどの話の店とは別です)のスタッフが面談した上で引き合わせてくれた外国人のお客さまで、長い間に渡ってよい関係を作ってくださった方もいました。「赴任期間が終わって母国に帰ることになりました」と言われたときは淋しかったけれど、かけがえのない思い出がたくさんできましたし、お別れの時にかけてもらった言葉といただいたプレゼントは今も大切にしています。縁あってめぐり会えてよかった、とおそらくはお互いに思うことができて、たいへん幸せな経験でした。

そう、いろんなケースがあるということです。
この「いろんな」の振り幅がすべてにおいてすごすぎるので、下方を底上げしてほしいというか、危険が取り除かれてほしいところなんですけど、ね。

 

ちなみにちふゆちゃんと仲のいいまりあちゃんは前回のストーリーに出てきたまりあちゃんなんですが、どうして友情出演しているかというとわたしの
『こんなテキトーなノリのスタッフばっかりなのあんまりだからせめて同一人物でありますように!』というわけわからん願望のあらわれです♡でもめっちゃいるよねこーゆー人!(笑)


ほんとそうですね。最高です。まりあちゃんも「ちふゆは最高だから!」っていつも言ってると思う。

 

【追記】
ちふゆちゃんが歌ったLet it go に、最後の決めぜりふ(わたしもここが好きです)を言ってあげたのに全然わかってもらえなかったお気の毒な李さんですが、もしもあのあと、ちふゆちゃんが本当に『英語を入れると日本語が出てくるLINEのアカウント』であのメモの訳にトライしたらどうなるのか、実際にやってみました。

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な、なるほど……。
Take care. については「おっ」と思ったんですが、
You’re awesome. はもうちょっとなにかおしゃれにやってほしかったというか、「ものすごい」を「物凄い」としただけでもものすごい感が倍増ですね。うふっ。

そして肝心の一文はこのありさま。しかし致し方ありません。

 

Google翻訳でもやってみましょう。

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1行目については言うことないんですが、そのう、その後が、なんということでしょう。

これさあ、たぶんやっぱり結局まりあちゃんに訊くんじゃないかな……(笑)。
そしてまりあちゃんはすぐにピンとくるか、それか直接Google検索にかけると思うので、正解にたどりつけると思います。よかったね李さん。

2016-11-06 | カテゴリ: weblog, まじめなはなし | タグ: ,  

 

ワーカーズライブ:奇妙な生き物

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: 奇妙な生き物1468242942875

ガールズヘルスラボの連載です。
かっこよくはなくて、得体がしれなくて、社交的でも明るくもなくて、何を考えているのかいまひとつよく分からなくて、でもカーテンの向こうにはなにか優しさがあるとちょっと信用できそうなお客さん、

……って、いいよね。という話をタミヤさんとしてたんですよね。それで「キモさやこわさと紙一重のところにある愛しさ」について考えているうちに爬虫類が出てきてしまいました。きもくてこわくてかわいい。

わたしは爬虫類が好きなほうなので、生きているイグアナがいるお家なんぞに呼ばれた日にはテンションがぶち上がってしまいそうですが、基本的にペットがいるお家でデリヘルを呼ぶときには一言申し出てくれたらありがたいなあと思います(だいたいのお店は電話で確認してるけど、忘れちゃったりもするし、あと飼い始めたときとかね)。犬や猫ならいいというものでもないんです。アレルギーがあるコンパニオンが来てしまって、その場でとんぼ返りしなくてはならなくなったらそれは三者全員の損失になっちゃいます。わたし自身は犬も猫も鳥も、大好きなのにアレルギー反応が出てしまうなんとも淋しい身体なので、玄関先で不穏なにおいを察知する→かわいこちゃんが「だれかきた!だれ!だれ!」と飛び出してくる→ああっ撫でたい!!→しかし一刻も早く立ち去らなくては→ああああ撫でまわしたい!!!→ポカンとしているお客さん→すごすごと帰る という思い出がけっこうあります。

そういうとき、「じゃあ別の部屋に入れておくから」「うちの子はおとなしいから」「掃除ぐらいしてるから」ってよく言われるんだけど、そういう問題ではないって分かってほしいな。触れ合わなければ大丈夫だと思われていることもあるけれど、決してそうとは限らないものですよね(わたしは「一緒に住んでいた彼女と先日破局し、飼っていた猫さんは彼女が連れて行った」という部屋で具合がわるくなってしまったことがあります)。
帰ることを告げたとたんにさりげなく悪態をつくのもやめてほしいものです……(お宅は客を選ぶんですか、とか)(俺が不細工だから逃げるんだろう、とか)(細工の具合はどうでもいいけど失礼な人からは逃げたいものですな♡)さすがにそんな人はたくさんはいないけど。もしかしたら、アレルギー全般を気合いの問題だと思っていて、自分がチェンジされたかのような屈辱感を感じたのかもしれませんね。そこまで説明して差し上げる時間はないので、耳を塞いで後ずさりするしかありません。すごすご。


「俯瞰祭」ってなんかいい言葉ですね。
わたしは、どうだろうなあ、仕事中にちょっと客観的になってることも確かにあるとは思うんだけど、だいたいはそれどころではないような気もします。それか、高速で絶え間なくばばばばばっとスイッチングしてるかもしれない。サブリミナル的に挟み込まれる俯瞰(笑)。
すべて終わってドアを閉めた瞬間、シュン、と切り替わってものすごく突き放した視線で振り返っちゃったり。
良くない意味で気の抜けないお客さんといて、内心でずっとピリピリ警戒しながら、その場で対策を練り演技プランを立てては即実践し、結果をみて次の手を考えて、という感じになっている余裕ゼロのときになぜか「あーあ、この人ぜったい似たようなことでたくさんの女の子に嫌われてきたんだろうなあ」なんて0.01秒思ってしまったり。これはたびたびありますね。

機嫌を損ねないようにこちらに不利な要求をはねるとか、そういうことがメインの仕事になっちゃってるとき。交渉していると相手には感じさせないように、交渉しなくちゃならないとき。
そういうときは、とっさの俯瞰や客観視の果てに従順と寛容が混ざってよくわからないものになってしまうことがある気がします。
無関心の強い支えによって従順になれることもとても多い。それから、諦念も。あきらめの気持ちがわたしを優しい女にすることはよくあります、お客さんにも、お店にも。

それにしてもホームページの売り文句に「従順」と書かれるって、おそろしいよね。

ああそれから、これは良心的なお客さんとでも起こるけど、触れ合っている最中に「人間ってへんな生き物だなあ」としみじみすること。これはとてもよくある、椎名あるあるです。
なんでこんなカタチして、なんでこんな動きするんだろう、って。ずっと見てるとちょっと気持ちわるくて、ちょっと神聖で、ちょっとやっぱり可笑しい。
仕組みを知ればきっと合理的な理由があるんですよね。だいたい人体っていつもそう。それどころか、なんてすごいんだろうって途方に暮れてしまうほどの宇宙みたいなシステムが、このちっちゃな骨と肉と皮のところ、細胞のひとつひとつに詰まってる。まだまだ謎のまま、てんで可笑しいまんまの謎もちょっとあるところもおもしろいです。人体の小宇宙〜みたいなテレビ番組けっこう好きです。

そして作中でまりあちゃんが言ってたみたいな、「お互いを思い出すこともなく、運命にかかわることも特にない」くせに「この人の興味と快感が欲しい」。っていうあたり。この辺は個人によってとても違ってくるところだと思うけど、わたしにはしばしば自然に起こることなので、変なの、っていつも思います。変でおもしろい。お客さんがわたしの身体やなんかにふとした執着を見せてくれるときも、ああおもしろいな、って思うことは多いです。とっくに射精してしまっていても、身体のどこかをそうっと、宥めるように撫であうことってよくありますよね。なんでさわりたいの、と聞いてしまえばたぶんあまり考えずに「きみがかわいいからだよ」とか「おれ男だからしょうがない」とかの答えをツルリと答えて済まされてしまうんじゃないかと思うけど、それでは説明しきれていない気がして。
ちがう人間の皮膚がくっついたときになぜか生まれる不思議な気持ちよさが、家族でも恋人でもないわたしとであっても得られることを知っているから手を伸ばすのではないかしら。満員電車ではだめなのに。そのくせ、多くの人は「愛する気持ちがあってこそスキンシップはよいもの」「築いてきた絆があってこそセックスは」と言いたいように見えます。
ほんと、へんな生き物です。

 

ずっと前のことだけど、それまでわりと淡々とサービスを受けていたお客さんが、すっかり着替えてあとは帰るだけ、となったわたしに向かって「いま自分の心に『帰したくない、名残惜しい』って感情が生まれてきて驚いています」と言ってくれたことがありました。
女性との性的な接触によって快感を得る目的で利用したつもりだったし、相手については自分の性的興奮をそがない容姿でありさえすればそれ以上は興味がなかった、と。けれどわたしに対して「いろいろしてくれてどうもありがとう、もっと一緒にいたい、好かれたい」という気持ちが生まれた、プロに対していわゆる擬似恋愛を求めたり、さらに恋愛感情を持ってしまう人をどこかで下に見ていたけれど、自分にもエモーショナルな衝動が起こることがわかってびっくりしている、考え方が変わる気がする。
そんなようなことを、さらりと笑顔で言ってくれた。
嬉しかったです。その人が、会ったことのなかったご自分と出会うところに一緒にいられたことも、もっといたいと思ってくれたことも。

知らないへんな生き物どうしでさわりあって笑顔になって、ときどきお互いにふと自分を客観的に見ちゃって可笑しくなったりもして、そしてなんだかんだで幸福感など感じちゃったりするなんて。この生き物あなどれません。ちょっと、いえかなりきもいですし、どうにもこわいですし、そしてどこかかわいい。

いろいろ大勢の人にとっての「ゆきずりのへんな生き物」になる身としては、せめてできるだけ寛容で気のいい生き物でありたいものです。

2016-07-13 | カテゴリ: weblog, たわいないはなし | タグ: ,  

 

ワーカーズライブ:99 / 100

ガールズヘルスラボにて、3月のワーカーズライブを担当しました。
毎月1日更新のワーカーズライブですが、うっかり入院&プチ手術するという失態をおかしてしまったため今回に限り一週間延期をさせていただきました。すみません。
外見に傷が残る類のものではありませんでしたので失職や移籍の心配(審美的な面での問題で、セックスワーカーの病気やケガにはこの問題がついて回ります)もありませんでした。お知らせした方々にはご心配をおかけしました。もうすっかり元気です、口座の残高以外は。

入院前にだいたい頭の中で考えていたものは全然違うストーリーだったのですが、術後の湯船に浸かれない期間がわたしの予想よりも少し長く、書いている途中で自分がつくった登場人物の入浴シーンが羨ましすぎて気も狂わんばかりに嫉妬してあばれてころげてワンワンさめざめ泣いてしまいそうでしたので、全部やめました。入浴の離脱症状でしょうか。
かわりに書いたのがこれです。

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: 99 /100ghl1603

口コミや店に連れてくるというのではなく、こういう個人的な形でわたしに直接お客さんがお客さんを紹介してくれるということ、ときどき驚かれますが何度かあります。わたしに明かされなかったケースもきっとあると思うので、もっとあるんでしょう。一体どうしてそういう話になるのか、どういう心理でわたしをシェアしているのかは理解していませんが、とくに嫌ではありません。
お友達だったり、会社の同僚だったり、上司から部下も部下から上司も、いろいろあります。複数人で来るお客さん方と同じように「これってあとで全部『男子会』で喋られるのかな……」と思うとやりにくいことこの上ないのですが、どうしたことか、こういう個人的紹介で出会ったお客さんはだいたい安全性が高いというか、乱暴だったり無理難題を押しつけてこない方がほとんどなので、もしかしたらあちらも「悪さをしたらチクられる」と思っているのかもしれませんね。

 

トモヤくんがしていたような根掘り葉掘りの質問攻撃、中高年だけに伝わるウザ芸のようなイメージがありますが、20〜30代の若い方でもやっぱり、あります。
なのに、わたしの答えにはそれほど興味がある様子ではなく、ただひたすらにデータを集めることに必死になっているような……そんなときなぜと問うと、しばしば返ってくる同じ答えがあります。

本当の君を知りたいから。素の君でいてほしいから。

じゃあ聞くけど、あんたにとって本当って何?
——なんてもちろん言い返しはしません。ただ、心の中で「フーン」と思うだけです。古田新太の顔をして。

「素」を求められることの多さは、セックスワークを経験していない方にもなんとなく想像してもらえるのではないでしょうか。
風俗店のレビューサイトでは、その客の期待と比較して声が小さかった場合は「やる気がない」と書かれ、大きかった場合は「演技がハデ」と書かれ、丁度よかった場合は「素で感じていた」と書かれがちです。
会話が盛り上がった場合は「心を開いて話してくれた」、盛り上がらなかった場合は「無駄話をされたので時間稼ぎだろう」、会話自体が上手くいかなかった場合は「なんか暗い」。

「僕の前でだけは仕事を忘れて素になっていいんだよ」という言葉も、たいへんありふれています。ありふれすぎて「伝えたいこの想い〜♪」みたいなひとつの決まり文句になってしまっています……聞かされる方にとっては。
でも、もしも本当に「仕事ではない、素」であるとしたら、なぜ目の前にいるこの他人と親しく話し、それどころか性的な行為をしようとしているのかの説明がつきません。本当はお客さんの側も気がついている事実です(例外もありますね……)。

わたしたちが求められて精一杯差し出す「素」とは、「そのお客さんの求める満足からできるだけギャップがなく、かつ自分の不利益や危険につながらない態度を『素』として演じる」ことです。なので、わたしたちは「よりよい素」を演じるための努力をします。
名前も年齢もその他のプロフィールも、これまでしてきた恋の思い出も、今この瞬間の心模様も。
努力がうまく実れば万々歳ですが、これを「詐欺だ」「騙された」と解釈し、好まない人もいるでしょう。それならそれで、はじめから「素」を求めず、素を暴くための質問もせずに別の会話を楽しむこともできます。「この子は仕事とは関係なく俺に好意や恋愛感情があるから行為を楽しんでいるのだ」と思い込むことだけが、性的サービスの楽しみ方ではないですし、それをよく知って遊んでくださる人もたくさんいます。
ただなんの義理もない他人との濃密な接触を求め(もちろんこれは正当です、対価を払っていればね!)ながら同時に「素」を要求し、さらにそれが本心であるかどうかを疑い証明しろと迫る人も、後をたたないんですよね。それはあまりにもサービス労働のさせすぎじゃないかしら、と思います。

 

わたしが個人的に「素」を求めて楽しもうとするお客さんに気を許さないのは、その流れで恋愛感情を求められるのがとてもやっかいだからです。
性的なコミュニケーションは恋愛感情を持つ相手とのみ行いたい、という希望を個人が持つとき、それは誰にも口出しできないもので、尊重されるべきものです。当然ですよね。
でも、それがいつの間にか「恋愛感情の介在しない性的なコミュニケーションは誰にとっても不当/不自然/不本意」というものに変わってしまっていることがよくあり、これはとても危険です。女性限定で適用されたりもしますね(女には性欲がないから、恋愛感情のみがセックス欲求の根拠であるということでしょうか。よくわかりません)。

なぜこのすり替わりが危険なのかは、あとはもう「好きでもない相手と、金のためにそんなことするなんて」に簡単になっちゃうからです。恋愛感情に基づかないセックスをする人間が、しない人間よりも間違っていて汚れていて劣っていて見下されるべきだ、という規範があっという間に全員をふるいにかけて蔑みや差別心を楽々と作ってしまうからです。見当違いの哀れみや憎しみなども作りますね。そしてわたしのメールボックスに「はじめまして、死ね」というお便りが舞い込むわけです。心配しなくても待ってればいつかちゃんと死ぬのにねえ。

 

わたし個人に限っていえば、業務上のセックスであっても「恋してる相手ではないから」という理由で仕事に苦痛を感じたことは一度もありません(口が臭いからという理由ならば何百回もあります、そりゃあもう!)。もちろん相手に好感を抱ければぐっと負担は減りますが、それは「いい人だな〜」「常識があるな〜」で十分です。それが最高の状態です。

これはただのわたしの話で、わたしのあり方です。
信じられない、と思う人もいるでしょうし、自分は仮にセックスワークに就くとしてもそういう価値観では働かないだろうなあ、と思う人も、実際に違った考え方で長く働いていらっしゃる人もいるでしょうし、口には出さないけど正直ドン引きだわーと思う人も、自分とは違うけどちょっと分かるとこあるわーって人も、もうどんな人だっているでしょう。どんな人がいたって別にどうだっていいでしょう。それぞれの人が別の誰かの価値観に戸惑うかもしれません、理解しがたいかもしれません。しかし蔑む権利などはありません。
大切なのは誰のあり方がより「普通」でより「当たり前」か、そんなランキングじゃない。そんな物差しでなにを測れるというのでしょう。大切にすべきは、誰のあり方も、他の誰かに侵されないということの方です。

初対面の人から対価をもらって行うセックスに試行錯誤している人も、婚姻届を提出するまではセックスをしないことで愛情を示すと心に決めている人も、誰に蔑まれるいわれもありません。「そのようなことをする/しない あなたはおかしい」と言われる筋もなければ言える筋もまたありません。誰だってです。
それでも何か言いたいなら、誰かを「普通じゃない人間」と扱うことで得られる安心や自信がいまどうしてもあなたに必要なのなら、どうぞ胸の中だけで言ってくださいな。

 

トモヤくんは、どんなにクオリティの高い接客を受けたとしても風俗店では満足できない、「お客さん」として楽しめないタイプの人だったかもしれません。自分の欲求や願望の自覚とか、自分以外のセックスの多様性について考えるとか、そういうことに関してまだ子供だったかもしれません。だけど別れ際の彼は「すごいね」という言葉ひとつの中に、自分の戸惑いをすべておさめました。
「当たり前で普通」の物差しを手放すことはできなくても、それをアリサに向かって振り下ろすことをしませんでした。

だから「好き」という言葉こそ絶対に口にすることはできなくても、部屋を去る最後のときまで何が彼にとってプラスになるのかを彼女は考えていた。人間性を見限った客に対しては、なかなかしたくない努力です。
快適とは言えないしすごく難しい仕事だっただろうし必要最低限の仕事をとうにオーバーしていたけど、きっとあとから思い出すのが嫌な記憶にはならないと思います。しっかしよく働いたよね……。

セリザワさんがどういうつもりで「社会勉強」と言ったかはわかりませんが、たぶんこの人は物差しを持たない、信じない人のような気がします。それではないところでアリサちゃんを「好き」なのでしょう。
そういう人と何かを積み重ねていくと、時々は「好き」という言葉を誤解の恐れなく使えたり、保険証に載っているのと同じ年齢を知られても平気だったり、します。それでなにかが測れるなんて思っていない相手だから。「素」を勝ち取ったなどと思っていないから。
そんなふうな、部分的で外には出ない、名前のつかない好きと好きの両想いがふと生まれるときのあやふやな面白さを「ふーん」と味わっているときくらいが、もしかしたらわたしの素の部分かもしれません。唇の端を少し持ち上げて、ふーんハハッ、と。
なんにせよ古田新太っぽさはあるんですけど。

でもでもでもでもよりによってその年齢をうっかりバラした罪は重いよ!!!ダメ!絶対!!
今度お詫びになにか買ってもらいましょう。

2016-03-18 | カテゴリ: weblog, まじめなはなし | タグ: ,  

 

ワーカーズライブ:ベイビー・カモナマイルーム

ガールズヘルスラボにて、11月のワーカーズライブを担当しました。
セックスワークにおいてツールとなるものは容姿や肉体サービス(だけ)ではないということ、キャリアやスキルは無視されがちだけど確かに存在すること。攻撃的だったり嫌味な相手でない場合であっても、そこに感情労働はあるということ。よくある「素人にある『優しさ』がプロになるにつれ失われる」という思い込みのまやかし……などなど、いろいろ盛りだくさんです、筆者の心の中は!

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今回は甘めの話をひとつ、ということになり(前回が苦すぎたからね!笑)書いたものなのですが、ただのものすごく仕事する話になってしまいました。この文章の中でセックスワーカーのカナコちゃんは、キス以外の具体的な性行為をしているシーンがありませんし、裸体をさらしてもいません。ですが、彼女がとっても「仕事」していたこと、きっと分かっていただけるんじゃないかなーと思っています。

といっても、すべからく対人サービス業は(わたしたちの仕事に限らず)、一体どこまでが「仕事」なのか? というところがたいへん曖昧です。「それも仕事のうちでしょ」と言われては堪らないようなこと(規定外の行為を要求する相手を逆上させることなく諦めてもらうとか、侮辱的な言葉に対して理解できない振りをして笑うとか、いろいろ)も、たくさんさせられてしまう、せざるを得ないのが現状ですよね。

このストーリーでカナコちゃんが行っていることも、それも仕事のうちですよと言い切れないことです。だって本来の「仕事」といったら事前に了承した基本サービスにある項目、つまりキスとフェラチオと素股くらいのものなのですから。時折なぜか風俗嬢にカウンセラーや、はたまた「おかあさん」のような精神面のケアをする役割を当然に要求する人がいるのですが、それは不当です。
カナコちゃんほどキャリアがなく、お客さんの気持ちをここまで汲んではあげられない人もいるでしょうし、適性と技術があるセックスワーカーでもすべての相手を満足させられはしません。相性と時の運によるところが大きいことです。それに対して「プロじゃない、意識が足りない」などと言われるのはやっぱり納得いかないものです。

ただ、「キスとフェラチオと素股くらいのもの」を行う上で、どうしてもそれ以外に心を砕かなければならない、そうせずにはいられないことがたくさんあるのも本当です。それをするとき、単純にそうしたいと思ってしていることがあるのも。他の職業を引き合いに出すのは緊張しますが、例えば、看護師さんの役目としては「適切に採血をする」だけだったとしても、そこには「ちょっとチクッとしますよ」や「お疲れ様でした」という言葉と笑顔があり、患者は決して笑顔にお金を払っているわけではないんだけれども、それによって大いにケアされている、みたいな。それの容量大きい版が、規定の時間を過ぎた後で行われた長いディープキスだったのかなあと思います。

確かなのは、同じ「仕事のうち、とも言い切れない仕事」をするのであれば、暴力や嫌味やマウンティングから身を守りつつ相手の満足をかたちづくることより、このお客さんのような人と共に手を取り満足を探してさまよう方が、それはもうずっとずっと、幸せだということです。わたし個人においては、仕事をする中で得た大切な思い出、よいものとして大事にしまってある記憶というのはそれを通じた経験がほとんどです。

書いた人としてのわたしがこれを書いていてもっとも感情が高ぶったのは、最後の「1から始まり、あっという間に10になってドアが開く」という一文でした。セックスワーカーとしてのわたし自身の普段抱えている心情を、遠慮せず露骨に出したところだなあと思っています。伝わりやすい感情ではないかもしれませんが、すごく切実なの(笑)。文中で言うところの「気も狂いそうなほどの永遠」との対比を無意識にして、ああ「あっという間」だなぁ、と認識した瞬間、自分をねぎらっている気がするんです、普段わたしはね。

 

タイトルがすごくいい、とGHL主宰のタミヤさんに褒められて有頂天です。
これは、このお客さんの黒い本棚(の、二重になってる後ろ側)にはおそらく岡村靖幸のCDがあるようにわたしには見えたので、彼の作品みたいなタイトルをつけたくなってこのようにしました。

そうと決めるとこの男性までも岡村さんのような佇まい(このPVのときとか……)に見えてきて、そういえばタミヤさんは彼のファンだったな。と思いおもむろにLINEで「岡村靖幸さんお好きでしたよね?」と確認したところ「すきだよ超すき!だいすき!」と言われ。
今書いている原稿に出てくるお客さんが、なんだかあんな感じの男のひとなんじゃないかって思ってね……とモジモジ話したら「挙動不審なの?」とずばり言われたので胸の奥が熱くなりました。

 

それから……余計なことをちょっと書いてしまおうと思います。
このストーリー、わたしもわりと気に入っていますし、ロマンティックだと言ってくださる方も多くいらっしゃってすごく嬉しいです。ほんとうに嬉しい、これをロマンティックだと思ってもらえて。
でもね。ちょっとそれを横に置いておいて……例えばね、たとえばだよ、このお客さんがね、もし、この先もっともっとカナコちゃんと過ごして、ちょっと思い入れを持ちすぎて、いいことと悪いことの区別があやふやになってしまう状態に追い込まれて魔が差しちゃう、なんてこと、絶対に絶対にあり得ないとは言い切れないですよね。
そうなった時、おそらくカナコちゃんは「風俗で働いてたんだから自業自得だ」「どうせ性悪女が気を持たせるようなことをしたんだろう」と言われてしまう。もしも週刊誌に載るようなことになれば、どんな見出しが付くことか。
答えて欲しいわけじゃありません。ただ、一度だけ、ちょっとだけ、そういうことまでチラリと思ってくれたら、すごくすごく嬉しい。それもまた確かな現実の一部だからです。
せっかく好きになってくれた作品に自分で水を差すようなことをしてごめんなさい。ちょっと血迷いました。許してね。
このお客さんはたぶん月に一度呼ぶいいお客さんになると思うし、その度に少しずつうまくお話できるようになって、素敵な時間をたくさん持つんだと思うよ。

これを聴きながら書いてました

2015-11-03 | カテゴリ: weblog, まじめなはなし | タグ: ,  

 

ワーカーズライブ:水はあなたを知っている

ガールズヘルスラボにて、3月のワーカーズライブを担当しました。

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: 水はあなたを知っている
http://t.co/J5byP0833S

今回はわたしのスケジュール管理の甘さによりたいへんわずらわしい感じの仕事が多数重なってしまい、また性風俗について書かれた本など読んだこともあり切ない話や職業差別のからんだ話は書きたくない! 偏見とかもうしばらく考えたくない!甘くて緩くてどうでもいい話がだらだらと書きたい! と思い、傷つけてこないお客さん、と、仕事仲間として扱ってくれる店長、を登場させました。2大「我々がどんな気合いで取り組んだところで得られるものでもない、しかし得られた場合は飛躍的に業務の効率が上がる」存在です。ふふ。

店長にはこの人のようにきっちりと敬語を使って接してくれる系統の人も、もっとフランクにこちらのことも「源氏名+ちゃん」で呼んでくるような人もいます。どちらが良いとかではないのですが、最も発言権を持つ者の人柄というのが職場全体をたやすく左右する感じはどこにもあるものではと思います。現在の勤務先の店長はエレガントな敬語派で、キャストの退勤時に居合わせると「ありがとうございました」と頭を下げて見送ってくれるほどですが、面と向かって個人的な話をしていると月に2回くらい何かの折にひとことだけ崩したりして、貴重なものを見たようなありがたい気持ちになります。

一件だけ呼び捨てにしてくる店長がいましたね。わたしは恋愛関係にある相手であっても呼び捨てを好まないのですが、なんとびっくり不思議なことに、いやではなかったです。あれはなんだったんだろうか。キャラクターということなのでしょうか。あの人でなければ初日で飛んでいたことでしょう。たしかに、とても明るい愛おしそうな抑揚で呼ばれていました。
彼はちょっとびっくりするほど人が良く、しかしそれゆえプライベートの女性関係が立て込んでいそうな人でした。それをキャスト一同が「いつか刺されないといいけどね〜」などと言いながら暖かい目で見守る店でした。そんな職場環境はあとにも先にもそこだけでした。

ミネラルウォーターの銘柄がいろいろ出る話にしたのは、わたしが女性のセックスワーカーに対して自覚している偏見のひとつに「水が好き」「硬水を平気で飲める人が多い」があるため、そこからの連想です。わたしもコントレックスを常温で飲めるタイプです。いちおうメジャーなところから選びましたが、ミネラルウォーターに興味のない方にはウザかったことと思います。参考までに以下の表を置いておきますね。興味のない方は「うぜえ!」と思ってください。こんなにいっぱい書いたっけ。書いたんだな。あといろはすとボルヴィックがあればコンビニで買える水はだいたい網羅するでしょうか。いやだめだ森の水だよりとかまだいっぱいある。

  • クリスタルガイザー 38
  • 六甲のおいしい水 84
  • エビアン 304
  • ヴィッテル 305
  • ペリエ 400
  • ゲロルシュタイナー 1310
  • コントレックス 1468
  • クールマイヨール 1612
    (椎名こゆり調べ 単位は mg/l)

原稿を書くにあたり、わたし自身は発泡性の水を好まないためゲロルシュタイナーの500mlサイズがどのくらいコンビニエンスストアに置かれているものか自信がなかったのですが、ガールズヘルスラボ主宰のタミヤさんがわざわざセブンイレブンに足を運び、あったよ、と教えてくださいました。たいへんお世話になりました。ごめんねありがとう。ちなみに椎名が仕事中に飲む水で気に入っているのはフィジーウォーター(105mg/l)です。立ち上がれ俺のコラーゲン!と念じることによりストレスが発散される効果があります。

タイトルが最後まで決まらず、いつか議論を呼んだ有名な本からつけました。そうです、パシッたりパクッたりしてこの原稿はできているのです。
水にありがとうと言えば美しく凍る、というのはフィクションだと今日では多くの人々が認識していますが、風俗嬢はみな病んでいる、とか、風俗に行く男はみな浮気性、とか、風俗店の従業員はみなコワモテ、とか、あとヘルスのサービスくらいじゃ性病なんてうつらないとか風俗行ったことなければHIVなんて心配ないとか俺だけは大丈夫とか、そういうあれやこれやだって幻想だという点では似たようなものです。まことしやかに語られるとつい素直に信じてしまう、というのは人間のいいところでもあり、しかし後にいくらでも思い直しときには考えを改めることもできる、それはもっといいところだと思います。あれ、偏見とかしばらく考えたくなかったはずが。やれやれまあいいか。

 

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