きらくなはなし, まじめなはなし

ワーカーズライブ:ずっとこのまま

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: ずっとこのまま

11月のワーカーズライブを担当しました。
同業の(とプロフィールに記載されている)方の書いてくれた感想をこっそり拝見すると「いるよねこういう客。困るよねぇ〜」と言ってもらえていて嬉しかったです。しかしそうでない方からは「気楽に読めるやつかと思ったのにホラー」「怖いやつは怖いと言ってくれ(笑)」みたいな声がちらほらあり、そのー、なんだ、ごめーーーん。怖がらせるつもりはなかったんだよう。というか完全に「ヤバい客あるある早く言いたい〜」みたいなノリでいたよね。うふふ、申し訳ない。あれかな、業界に慣らされちゃったかな、それともモルダーあなた疲れてるのよみたいなことかな。

……でも、ちょっと思ったんだけど、わたしももしかしたら、自分が風俗嬢であることを明かしていないときに他人の話としてこれをきいたら、「こっわ〜!」と思ったり言ったりするかもしれないのかもなあ。いやどうかな。うまく言えないけど、そんなふうに思いました。

こういう、セックスワーカーのフィクションを書いているときは、「わたしの仕事を知っているひとたち/同業経験がある人もそうでない人も(おそらくは3:7くらいで)混ざってて/とっても仲のいい人も、すこしだけ仲のいい人も、友達の友達、って感じや通りすがりの人も混ざっている/性風俗業界に対しては懐疑的な人もいる(が、そこで働く人に憎悪を表明している人はいない)/と一緒に和やかにおしゃべりしてる中で、わたしがいつか人から聞いた話をしゃべって聞いてもらってる」みたいな気持ちで文章をつくっています……うーん、たぶん。はっきり説明しづらいけど。
それで、そのときには、普段のわたしの日常生活ではそれなりに出番が多いはずの「仕事のことは明かさずに、で、明かさないものだから自分でも半ば忘れて社会生活を送っているわたし」は、もうすっかり隠れて、出てきてくれないんですよ。ちゃんといることはいるんだけどね、わたしはいいよ〜、って感じで部屋から出てこないし口も出してこないしアドバイスもしてくれないの。

そういう自分にもし読んでもらったら「こわいねえ」って言うでしょうか。いやどうだろうな。わかりません。

 

それはそれとして、でもさー、こういうの、実際は別に風俗じゃなくたってありますよね、つきまとわれ問題、ストーカー問題。わたしもありますもん、まったく別の仕事をしていたときに、お客様からつきまとわれて業務にも私生活にも支障が出たこと。相手の職務と自分の立場を利用した迷惑行為に困らされる……と表現すれば、もうたやすく想像できる単なる「接客業あるある」ですよね。

むしろほら、尾行されてるときに一対一じゃないうえさらにこっちは鉄のかたまりの中にいるわけですよ、だからまだ安全性が高いといえるのではないだろうか。さらに堅気の接客業と違って本名の書かれた名札とかはつけてないわけだし、運転してる人は3連続同じ方向に曲がる程度の知識は持っていて、上司はたぶん同様の状況に対応した経験とか持ってるわけですよ。ほらほら、怖くなくなってきたでしょう。どうかな。どうかな。だめ?

(……これって「堅気の接客業」の非常時の守りが弱くてやばいってことですよね。本名の名札、あれ本当に必要だろうか。判別できれば戸籍にのってる名前じゃなくたって用は足りるのでは)

あとお友達に「最後どうなったのか分からないから怖いんだよ〜!」って言われちゃったよね。なるほどそうだわ。これはですね、お客様が『やってはならないこと』をやってしまったら、そこから先は店の出番なんですよ。粛々と対処はされるでしょうけど、その内容をミユさんが具体的に細かく知ることはないと思うんだ……とりあえずわたしの場合は、今まで働いてきてだいたいいつもそうだったので。
ミユさんは誰にも守ってもらえないって思ってたけど、そんなことないと思うよ。だってデリヘルだとよく「カギ開けとくからノックしないで入ってきて」とか「部屋のインターホン押さないで入ってきて」みたいな注文する人もいるんですよ。理由はいろいろあって、隣近所を気にしてだったり、出張で泊まってるホテルで隣が同じ会社の人だから〜的なことだったり、到着を待つ間に寝落ちしそうだから女性に優しく起こしてほしい(もう寝ちまえよなあ!)とかもあります。それのバリエーション、客の図々しさが跳ね上がった版でしょう、カギを渡されて使わされるって。

そりゃあ店としては喜ばしいことじゃ全然ないし「そのころちょっと相談してくれていれば……」とはなるだろうけど、その場でテクニカルに回避したり力強く突っぱねたりできなかったこと、すぐに店に言えなかったこと、そうできるだけの経験値も立場も持ってなかったこと……それって、『やってはならないこと』じゃ、ないですよね。
自分の経験からそういうことを察して、カナコさんが言ったのが「悪くてもいいけどたぶん悪くない」です。きっと。

守ってもらうべき場面では守ってもらいましょう。堂々と助けてもらいましょう。わたしたちはいろいろな危険に遭う可能性の中で仕事をしていて、雇う側が知らんぷりを決め込んでよいことではないはずです。警察にしてもそうです。もし客が『やってはならないこと』をやったときは、それによって目の前に危険が迫ったときは——たとえそれがわたしたち自身が招いたかのように外野から見えたとしても——助けられる権利、安全確保に協力してもらう権利があるはずですもの(もっと言っちゃうと、わたしたちの身ではとても大きな恐怖や危険であっても、店のスタッフが相対すれば全くそうとは限らなかったりするものです)(男性スタッフが出て行くと、さまざまな「力の差」がガラリと変わるということですね)(心強くもありますが、悔しくやるせないことです)。

……なんて言ってはみたものの、ですよ。
そういう準備のない店や気持ちのないスタッフに当たってしまう可能性は、やっぱり、あるんだよ。そしてそれは、実際にトラブルに遭う前にすべて見抜けるわけじゃない。どの程度やってくれるか、正確に知ることはあまりに難しいです。やれやれだよ。祈るしかないなんて悔しく頼りないことですが、これもまた、性風俗業に限らない問題ですよね。
好意がきっかけであろうと、親切を受けたことがきっかけであろうと、つきまといは加害行為ですからやってはなりません。そして相手の職務と自分の立場を利用した加害は特に卑劣です。
さらに、運悪く危険を回避しきれず被害が甚大なものになった場合に『やってはならないこと』をやった者ではなく「そういう仕事をしていたわけだから」「好意を持たせたのだから」とやられた方の者がより責められ、それをもって一件落着かのように扱われる、そういう問題も忘れてはいけません。

 

ほとんどの安全面で、派遣型(デリヘルのことだよ)よりも店舗型の方に分があるといわれます(し、実際そうだなと思います)。でも、「帰り道を狙ったつきまとい」については、店舗型に勤める人にも降りかかる危険です。
超当たり前だけど出勤する場所が割れている上、出勤・退勤時間がホームページに出ているので尾行がかんたんなのです。ホテル型(受付があり、近隣のホテルで接客する)の場合だと衣装ではない服を見られるので、その日お相手した客が出来心を起こしてそのまま近くで待ち伏せ……なんてことも、デリヘルより容易にできてしまいます。

わたしの話を少しさせてください。おばあのむかし話を聞いてくれんかの〜。
あれはもう10年前、アタシが渋谷のホテル型の早番で働いていた頃のことじゃ。よく帰り道に109やマルイに寄って、お手洗いで数分過ごしてから駅へ向かっておったもんじゃ……喋りづらいから若返るぞい。無駄なことなんだろうと思いながら、わたしって小心者だな、と思いながら、それでもやめられなかったのを覚えています。
ある日、帰り支度をしてお給料をいただいたときにスタッフから「さっき近所のお店さんから連絡があったんだけど、なんか変なオジサンがウロウロしてるって〜。ちょっとキモいから駅の手前まで送るわ〜」と言われたことがありました。そういう不審者はすーっごく珍しい存在ってわけじゃないから、そうなんだ〜イヤですねえ、すみませんがお願いします〜、いいのいいの、ついでに買い出しあるし〜。ってな感じで、スタッフと一緒に店を出たんです。
こーゆー店の女の子をジロジロ見る趣味のヤツか、それとも現金ひったくろうとしてんのか分かんないけど、どっちにしても迷惑だね、と言い合い、そして楽しく談笑しながら歩いていたら、なんだか背後で変な気配を感じた。その瞬間スタッフにバッと肩を抱かれ、後ろでは別のスタッフが男を取り押さえていて、ええっやっぱり変な人がいたんだわ怖い!……と、その不審者の顔、見たことがある……自分の指名客でした。
目的やなんかは省略しますが、はじめからわたしが狙われていて、スタッフはぜんぶ知っていたようです。こっわー。
10年くらい(もしかしたらもっと)前の話です。その店の現場のスタッフは手練手管の人が揃っていて頼りになりましたが、まもなく警察に摘発されて消滅しました。私たちが会ったことのない偉い人が逮捕された流れでそうなったらしいという噂でしたが、本当のことはわかりません。働いてる人、びっくりするほど何も知れないんです。

スタッフさんたちともそれきりになりましたが、最後(になるとは、わたしは思っていませんでしたが)の時に、あの日隣を歩いてくれた人が「日ごろの感謝だよ」と言ってちょっとしたプレゼントをくれました。そして、どこに行っても頑張ってね、どこに行っても大丈夫だからね、と言われました。おいおいもういらないみたいなこと言うなよ〜! と大いにスネましたが、もしかしてこの人辞めちゃうんだわ、と勝手に察して、ありがとう、と言いました。
それからすぐ、店の電話は繋がらなくなりホームページは404になりました。

彼がくれた優しさこそ、もしかしたら吊り橋効果みたいなものだったかもしれません。理不尽な目にあう現場を目の当たりにしたゆえの、同情のようなものだったかもしれません。でも、その言葉は10年経って初心者でなくなった今も、わたしをちょっとずつ支えています。

悔しく頼りない世界でなにかとりあえずの支えになるものがあるとしたら、大丈夫だ、と言ってくれる人です。守るよ、とあらわしてくれる人です。その場限りの優しさでもいいし、「それが仕事だから」でもいい。わたしもそう言える存在でありたいし、それはなにも同業者じゃなくたっていいのです。

そういうことが書きたくてこの話が思い浮かんだんだな。と、いま分かりました。

 

【わたしがやっていた/今もやってることなど】
無駄かもしれないし、やらないよりはましかもしれない

  • 地下鉄の入り口/出口を毎日ランダムにする
  • 待っていたホームに最初に来た電車を見送る
  • 電車を降りたあと、ホームから出ていく最後のひとりになる(駅の規模や作りによるかも)
  • 差し入れは店の中で処分する、自宅に持ち帰らない(特にぬいぐるみとお花)
  • なんか怖いなと感じるお客さんのことはそれとなくスタッフに(愚痴の形でいいので!)知らせておく
  • 人柄に問題がなさそうでも、自分に会うために借金をしている客とは距離を置く(いきなり切ると刺激しそうな場合は3回に1回予約を受ける、とかでも)
  • NGや出禁やもろもろの対応を渋る店には見切りをつける
  • 接客の記録はつけておく(警察に相談する場合、時系列の記録が絶対ほしくなる)
  • 客が個人情報を喋った場合はそれもメモしておく
  • 親身に話を聞いて力になってくれた警察の方の名刺をお守りとして隠し持ち、心の安定を得る(今日も持ってるよ!)
2017-11-18 | カテゴリ きらくなはなし, まじめなはなし | タグ: , Comments Closed