まじめなはなし

ワーカーズライブ:ベイビー・カモナマイルーム

ガールズヘルスラボにて、11月のワーカーズライブを担当しました。
セックスワークにおいてツールとなるものは容姿や肉体サービス(だけ)ではないということ、キャリアやスキルは無視されがちだけど確かに存在すること。攻撃的だったり嫌味な相手でない場合であっても、そこに感情労働はあるということ。よくある「素人にある『優しさ』がプロになるにつれ失われる」という思い込みのまやかし……などなど、いろいろ盛りだくさんです、筆者の心の中は!

風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: ベイビー・カモナマイルームghl1511

今回は甘めの話をひとつ、ということになり(前回が苦すぎたからね!笑)書いたものなのですが、ただのものすごく仕事する話になってしまいました。この文章の中でセックスワーカーのカナコちゃんは、キス以外の具体的な性行為をしているシーンがありませんし、裸体をさらしてもいません。ですが、彼女がとっても「仕事」していたこと、きっと分かっていただけるんじゃないかなーと思っています。

といっても、すべからく対人サービス業は(わたしたちの仕事に限らず)、一体どこまでが「仕事」なのか? というところがたいへん曖昧です。「それも仕事のうちでしょ」と言われては堪らないようなこと(規定外の行為を要求する相手を逆上させることなく諦めてもらうとか、侮辱的な言葉に対して理解できない振りをして笑うとか、いろいろ)も、たくさんさせられてしまう、せざるを得ないのが現状ですよね。

このストーリーでカナコちゃんが行っていることも、それも仕事のうちですよと言い切れないことです。だって本来の「仕事」といったら事前に了承した基本サービスにある項目、つまりキスとフェラチオと素股くらいのものなのですから。時折なぜか風俗嬢にカウンセラーや、はたまた「おかあさん」のような精神面のケアをする役割を当然に要求する人がいるのですが、それは不当です。
カナコちゃんほどキャリアがなく、お客さんの気持ちをここまで汲んではあげられない人もいるでしょうし、適性と技術があるセックスワーカーでもすべての相手を満足させられはしません。相性と時の運によるところが大きいことです。それに対して「プロじゃない、意識が足りない」などと言われるのはやっぱり納得いかないものです。

ただ、「キスとフェラチオと素股くらいのもの」を行う上で、どうしてもそれ以外に心を砕かなければならない、そうせずにはいられないことがたくさんあるのも本当です。それをするとき、単純にそうしたいと思ってしていることがあるのも。他の職業を引き合いに出すのは緊張しますが、例えば、看護師さんの役目としては「適切に採血をする」だけだったとしても、そこには「ちょっとチクッとしますよ」や「お疲れ様でした」という言葉と笑顔があり、患者は決して笑顔にお金を払っているわけではないんだけれども、それによって大いにケアされている、みたいな。それの容量大きい版が、規定の時間を過ぎた後で行われた長いディープキスだったのかなあと思います。

確かなのは、同じ「仕事のうち、とも言い切れない仕事」をするのであれば、暴力や嫌味やマウンティングから身を守りつつ相手の満足をかたちづくることより、このお客さんのような人と共に手を取り満足を探してさまよう方が、それはもうずっとずっと、幸せだということです。わたし個人においては、仕事をする中で得た大切な思い出、よいものとして大事にしまってある記憶というのはそれを通じた経験がほとんどです。

書いた人としてのわたしがこれを書いていてもっとも感情が高ぶったのは、最後の「1から始まり、あっという間に10になってドアが開く」という一文でした。セックスワーカーとしてのわたし自身の普段抱えている心情を、遠慮せず露骨に出したところだなあと思っています。伝わりやすい感情ではないかもしれませんが、すごく切実なの(笑)。文中で言うところの「気も狂いそうなほどの永遠」との対比を無意識にして、ああ「あっという間」だなぁ、と認識した瞬間、自分をねぎらっている気がするんです、普段わたしはね。

 

タイトルがすごくいい、とGHL主宰のタミヤさんに褒められて有頂天です。
これは、このお客さんの黒い本棚(の、二重になってる後ろ側)にはおそらく岡村靖幸のCDがあるようにわたしには見えたので、彼の作品みたいなタイトルをつけたくなってこのようにしました。

そうと決めるとこの男性までも岡村さんのような佇まい(このPVのときとか……)に見えてきて、そういえばタミヤさんは彼のファンだったな。と思いおもむろにLINEで「岡村靖幸さんお好きでしたよね?」と確認したところ「すきだよ超すき!だいすき!」と言われ。
今書いている原稿に出てくるお客さんが、なんだかあんな感じの男のひとなんじゃないかって思ってね……とモジモジ話したら「挙動不審なの?」とずばり言われたので胸の奥が熱くなりました。

 

それから……余計なことをちょっと書いてしまおうと思います。
このストーリー、わたしもわりと気に入っていますし、ロマンティックだと言ってくださる方も多くいらっしゃってすごく嬉しいです。ほんとうに嬉しい、これをロマンティックだと思ってもらえて。
でもね。ちょっとそれを横に置いておいて……例えばね、たとえばだよ、このお客さんがね、もし、この先もっともっとカナコちゃんと過ごして、ちょっと思い入れを持ちすぎて、いいことと悪いことの区別があやふやになってしまう状態に追い込まれて魔が差しちゃう、なんてこと、絶対に絶対にあり得ないとは言い切れないですよね。
そうなった時、おそらくカナコちゃんは「風俗で働いてたんだから自業自得だ」「どうせ性悪女が気を持たせるようなことをしたんだろう」と言われてしまう。もしも週刊誌に載るようなことになれば、どんな見出しが付くことか。
答えて欲しいわけじゃありません。ただ、一度だけ、ちょっとだけ、そういうことまでチラリと思ってくれたら、すごくすごく嬉しい。それもまた確かな現実の一部だからです。
せっかく好きになってくれた作品に自分で水を差すようなことをしてごめんなさい。ちょっと血迷いました。許してね。
このお客さんはたぶん月に一度呼ぶいいお客さんになると思うし、その度に少しずつうまくお話できるようになって、素敵な時間をたくさん持つんだと思うよ。

これを聴きながら書いてました

2015-11-03 | カテゴリ まじめなはなし | タグ: , Comments Closed