まじめなはなし
ワーカーズライブ:彼女はアイドル (You are an Idol)
ガールズヘルスラボにて、6月のワーカーズライブを担当しました。
風俗嬢コラム Worker’s Live!!-Girls Health Lab: You are an Idol
仲の良い女性2人のやりとり、というのがわたしは好きで、それは街中でふと断片的に耳に入ってくる会話でもなんだか詩のようであったりしますし、創作の物語のモチーフとしても、好きなもののひとつです。
とくに「パッと見た感じだけでいえばタイプの違う、仲の良い2人の女性の会話」というものにひかれます(自分も日々行っているはずのことであるにもかかわらず、物語を見出したくなるのです)。それも、思慮深いしっかりものと、やや危なっかしくて個性的な正直もの、という組み合わせがつい目に付きます。
子供の頃、待合室にはゴシップ週刊誌か幼児向け絵本かハードカバーの小説しかなかった近所の歯医者さんで、それでも表紙の色彩のあかるさに小学生にも読めるかもと希望をみて手に取ったのが、吉本ばなな(現・よしもとばなな)の「TUGUMI」でした。がんばって読み進めようとしていたら、院長先生(かれはクラスメイトのお父さんでもありました)が、それ、持って帰っていいよ、と言ってくれた本。あれも、たしかそうですね。
最近では竹内佐千子著「2DK」が好きです。「あんたはきなりちゃんに似ている」と言われ、ええーわたしあんなにはじけているかしらと思ったのですが、見渡すとわたしの人生のどの時代にも、こむぎちゃんのような頼れるチャーミングな女の子がそばにいてくれているので、もしかしたらそうなのかも、と思い直しました。寝起きの悪さと、ぼーっとしてお茶をこぼすことは確かに心当たりがあります。目を開けたまま眠ることはまだできません。
さて、わたし自身の話をすると、愛梨ちゃんと同じように、「お客さんに刃物を向けられた」経験が、残念ですが、あります。まだ仕事を始めて間もない頃のことでした。やはりお客さんの方としては刺したり切ったりしたいわけではなく、あまり考えずにとった行動だったのだろう、と想像しています。
その時はわたしの考える力が弱く、冗談のふりをして切りつけられる可能性や偶然のふりをして切りつけられる可能性に思い至るより前に「なんて変なことをする人だろう」「どう対応すればいいんだろう」あたりでひたすら困惑するのみにとどまったため、愛梨ちゃんのように警戒を見取られて逆上される、といった事態は免れました。
数日経ってから、自分はなんて怖い目にあっていたのか、と気がつきました。
いま同じことが起こったとしたら、最初から恐怖にすくむことでしょう。
ガールズヘルスラボ主宰のタミヤさんからは、公開の際にtwitterでこのような言葉を寄せていただきました。
何かに不条理に傷つけられた時、そのことだけでも大変なのに、追い打ちをかけるように心ない言葉が投げかけられることがあって。それは風俗で働いているから自業自得だ、というようなものであったり、また別の納得できない理由だったりするのだけれど。#
どんなにあさはかで理屈の通らないものであっても、そんな言葉ばかりに覆い尽くさているんじゃないかと思って絶望する。#
本当につらいことは、自分から出すことはできない。けど、そんな言葉にまったく組みしない、自分の助けになる誰かがいるとしたら、「彼女」なんじゃないかと思う。愛梨ちゃんや、やよいちゃんじゃないかと思う。#
— GirlsHealthLab♥ (@GHLFav) 2014, 6月 1
追い討ちをかけるような心ない言葉、というのは、セックスワーカーなら誰しも覚えのあることでしょうし、そうでない人にとってもまたよくあることではないでしょうか。しかしそれにまで立ち向かってゆく力というのは、なかなか湧いてこないものです。せめて、せめて、多くの人がそれぞれにとって「彼女」のような存在を得ることができれば、と願います。
弥生ちゃんが同業者なのか、非セックスワーカーなのかは、はっきり分かるように書きませんでしたが、ありがたいことにわたし自身はその両方のすばらしい友人に恵まれています。彼ら彼女らに話を聞いてもらえたときの安心や、わたしを不当に傷つけたできごとに対し一緒に怒ってもらえたときの感謝は、心の中で積み重なってわたしだけのシェルターとなっています。
それから、愛梨ちゃんが見たがっていた7時からのテレビは、たぶん鉄腕DASHです。あんなふうな、同じ秘密基地を持つ近しい男の子どうしが語らうようなやり取りも、また好きな物語のひとつです。