weblog, まじめなはなし

尊敬のプラカードを掲げて他人を踏む

twitterで書いたことをまとめて残しておきます。すべてそのままコピーしたものです。
言及しているリンク先のアドレスはここに出しません。お手数ですが元ツイートtwilogなど見てください。
またこの文章中で「SW」とはSex worker=性労働者(性別に関わらず、仕事として性行動をする人)を指します。

 

しんどい文章を読んでしまったとチラッと書いた。これのことでした。http://〜〜 (SWにはあまり勧められない)終わりのところね。なぜしんどいのか説明することがさらに苦痛になりそうな見通しがあったので、おとといは言えず。でも誰かと話したい気持ちもある。

この文はもともとセックスワーカーとは関係のない議題のために書かれたもので、それはSさんという女性にまつわる騒動で、わたしはその騒動が話題になっていることだけは知っていたけど自分の中になんのまとまった考えも持っていない。だからどこまで話していいのかよく分からなくて自信がないな。

筆者の方が”paradox”として示しているところにはすごく大事な視点が含まれていると思った。セックスワーカーはそれの欠如ゆえに辛い思いをさせられる機会もまたある。だけど「僕の主張は〜考えている」の文全体を読むと、決定的に抜け落ちているものがあると感じたんだ。

もしSさんに「風俗で働け」と言う他人がいたとしたら、現在風俗でそこそこ楽しく働いているわたしもやっぱり「ひどい」と思う。その理由は、SWが差別されるべき存在だからじゃなくて、SWがいま実際にそこかしこで差別されている存在だからだ。それを完全に跳ねのける術はわたしの見る限り、ない。

もちろん、その差別にめった打ちされながら飛び交う弾丸の中を這ってゆくのがSWの生活じゃないよ!でも、けっこうな豪雨は降ってる。わたしは傘を持ってはいるけれど、すてきなお天気の場所で手ぶらで買い物に行く人と「同じ」とはやはりみなせないと思う(そして傘があるのは幸運だからだ!)。

「プライドを持って働けば周りの好奇の視線など取るに足らないものは気にならないはず、無理解な人の心無い発言など相手にしなければよい」なんて言い方はよく耳にするけれど、当事者がひとりで跳ねのけられるものだと思っているなら「そんなことないよ」と言う。

ものすごく大きくて360度にわたって鉄壁の守りを誇る傘があったって、どんなに濡れても風邪をひかない強靭な身体を持っていたって、雨は止まないんだもの。

それを知っていながら「風俗で働けば?人を喜ばせる素晴らしい仕事だ、そう、料理人と同じじゃないか。同じだと思えないのは君の中に差別心があるからにほかならない!」と、今お金に困っている人に向かって他人が言い切るとしたら、わたしは「ひどい」って思う。

あと「こんなにいい稼ぎ口」と呼んでいるあたりで筆者が風俗業界の実情にさほど詳しくないことはわかるのだけど、そのわりにとても詳しいかのような、状況を冷静に判断しているかのような口ぶりで話されたことに傷ついた、というのもあるなあ。個人的に傷ついた。知ったようなこと言わないで!って。

「知ったような」については最近さんざん泣き言を言っちゃって、おなかいっぱいですよね。ふふ。あのとき聞いてくれたひとありがとう。

セックスワークが高給(実際そうかはさておき!)な理由として「妊娠の危険性・性病の危険性・精神的負担」があがっているけれど、現場で苛まれる「暴力の危険性」は何も妊娠と性病だけじゃない。暴力を受けるかもしれない、という精神的負担ももちろんだけど、実際の肉体が傷つくことも特別じゃない。

強く掴まれたり相手の動きがまずかったりでケガをする危険はあるし、自分よりも大きくて重たくて強い相手しかいないのだからそれはそうよね。そのことに無自覚な人も多いから、こちらが気をつけなければひとたまりもない(がしかし気をつけきれるものでもないから残念)。

ストーカー被害とかも暴力に入るね。ストーカーするような客に愛想を振りまく方が悪いのではという意見も聞きますが、確実に判定できる方法などありません。疑えば必ず全員何かしらの怪しい要素があるのが人間というものです。多くの人の頭にあるイメージに沿ったストーカーしかいないなら苦労はない。

ちょっと横にそれました。自己責任論に対するわたしのもやもやが露呈しちゃった。

いわゆる「手コキ店」が「妊娠と性病の危険がない」「それでいてかなり高給」という書き方をされている点も、読んだ人(志望者)たちに真に受けないでほしい。手コキ店(オナクラと呼んだりします)の多くは結局オプションで稼ぐような仕組みで、内容は詳しく書かないけどそれはかなりヘルスに近い。

中にはなんていうか硬派というかレトロというか、そこまでオプション主義でない老舗もあるにはあるけれど(収入は決して同じになならないでしょう)、わたしの知る限りでは最後は手を使って受けることになる。粘膜の接触がなくても、体液との接触はある。

わたしが傷ついたのは、本当には知らないのに知っているかのように振る舞って、誤った情報を流したり、わたしたちをうらやんだり、尊敬したり、あげくわたしたちに向けられる差別をスマートに斬ってみせるポーズさえとっている彼の態度だ。

おそらくこんなに頭のよい人なら、自分の認識が実情とズレている可能性に思い至らないはずがないと思う。社会の状況と照らし合わせ、風俗業が決して高給といえない状態であることくらい分かっているんじゃないかという想像をしてしまう。もしもこの想像が当たりで知らないフリをしているとしたら、

「それで差し支えない」という判断をこの筆者がした、ということだろう。わたしたちと、わたしたちを取り巻くものを上手に利用したんだと思う。そしてたぶんその作戦はうまくいったんだ。ここに書かれた「尊敬」も「うらやましい限り」も台詞であって、彼自身はSWの何にも言及するつもりはなかった。

炎上しなくてよかったですね。

わたしは偶然にそれを見て腹を立てて傷ついて泣いただけの風俗嬢であって、彼の「論理的な議論」の登場人物ではないの。でも、できることなら彼がわたしに投げた石を、燃やして投げ返してしまいたいけれど、彼はわたしに向かって石など投げていない。わたしが勝手にそこにいて、勝手にぶつかっただけ。

「気にすることないですよ!」はありふれていますが、本当はとても慎重に扱うべき言葉だと思います。「あなたの受けている差別は不当」を「だからそれによる苦痛はノーカウント」にせぬよう留意しなくては、あっという間に暴力になってしまいますね。RT: コレは突き刺さりました。

とにかく泣くほど悔しかったので、ふだんわたしたちについて、作られた架空のイメージに警戒心を持って接してくださっている人たちに「こういうのすごく危険です」と知らせたくて、最も理解から遠いところにいる(けどそう見えにくい)文として、話しました。

わたしはたまたまSWだからこれが本当に心に堪えたけれど、SW以外についてのこれと似たようなものの言い方ってたくさんあっただろうし、わたしも目にしてきたんだろうな。通りすぎたものもあったかもしれない。きっとあった。悲しいことだ。知りたいなあ。こんなひどいことを見過ごしてきたんだ。

あとさすがにこれは気にし過ぎと言われそうだけど、あの文章をもしSさんが目にしてしまったら、風俗嬢全般に対する憎しみや嫌悪のようなものがすごくふくらむんじゃないかって思った。それもすごくイヤな感じした。

すごいことよ、他人とその職業を「突っ込みどころ」に仕立て上げるって。おぞましいことよ。

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一生懸命書いている時にこのpostが流れてきて、なんだか元気づけられたので添えておきます。

2012-06-29 | カテゴリ weblog, まじめなはなし | タグ: Comments Closed